醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕夜の小町の裏通り

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  • きんぽうげ、
  • むかしの
  • 友とあるく
  • 山頭火

五月十一日 十二日 十三日 十四日 十五日
酒、酒、酒、酒、酒、……遊びすぎた、安易になりすぎた、友情に甘えすぎた、伊東君の生活を紊したのが、殊に奥さんを悲しませたのは悪かつた、無論、私自身の生活気分はメチヤクチヤとなつた。……

種田山頭火 行乞記 (二)

ゴールデン・ウィークが終わる。お店の人たちは少し、ほっとした顔をしている。稼ぎ時ではあるけれど、あれほど混雑が続いてしまっては身がもたない。

夜の小町通りを歩く人は少ない。故人を偲んで口笛を吹きつつ歩いていた呑み仲間も、すでに鬼籍に入ってしまった。いろんな人が通りすぎて、去っていった。

「なみだ恋」を真似て、「夜の小町の裏通り……」と呟きながら歩く。

〔日記〕 渋谷

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  • 雪空、
  • 痒いところを
  • 掻く
  • 山頭火

 一月十四日 曇、降りさうで降らない雪模様。しかし、とにかく、炬燵があつて粕汁があつて、そして――。
東京の林君から来信、すぐ返信を書く、お互に年をとりましたね、でもまだ色気がありますね、日暮れて途遠し、そして、さうだ、そしてまだよぼ/\してゐますね。……

種田山頭火 行乞記 三八九日記

渋谷は、何度訪れても道に迷う。入り組んだ谷と、放射状の道がよくない。
しかし年々迷宮らしさを増していく渋谷駅で、岡本太郎の絵に出逢うと、はっとする。急ぐ人々は顔も上げずに通りすぎていくが、おれはどうしても立ち止まってしまう。

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