醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

満員電車に因る神経麻痺作用

恋人と中野へ。今年初めて蚊にさされる(しかもコナカ店内で)。

学生街に住んでいると、ほとんど他の街へ行く必要が無い。スーパーはすぐそこにあるし、薬局も病院だってある。服はめったに買わないけれど、アジア雑貨の店があるのでだいたい足りてしまう。本屋も、どっさりある。

ふと気がつくと、何ヶ月も乗り物に乗っていなかったりする。だから、電車に乗って中野に行くのは新鮮だ。例え数駅でも。

東京に出て一番面食らったのは満員電車だった。地元で満員電車といえば、「座席が空いてない電車」の事をさす。無論、立っている人は数えられる程しかいない。誰かと身体が密着する事などない。

知らない人と寄り添うのが嫌だから、座席が空いていても座らない事が多い。必然、シートは一席分ずつ隙間ができる。東京に住んでいると、そんな光景はめったにお目にかかれない。例えだれかと密着しようと、疲れた身体をシートに押し込めたいと思う。知らない人と知らない人の間にサンドイッチされることが日常になる。

それがどうにも耐えられず、電車に乗らない生活を選んだ。満員電車は、神経を麻痺させる。東京で生きていると、嫌に近くまで人が寄って来る。例えば、列をつくるとき。ガラガラのホームであっても、後ろに並ぶ人がぴったりと寄り添ってくる。

殺気立った私はとにかく飛びよけたくなる。手を伸ばしてぶつかる位置に、知らない人がいることが耐えられない野生。ああ、私は野蛮児でありたい。