誰にでも、簡単に読めること ~ 夢枕獏 「陰陽師」
板前さんから借りた本。流行した頃には読まず、今頃になって縁が繋がった。映画化されたものを観ていたせいで、読んでいると俳優の顔が浮かんでくる。伊藤英明が演じた源博雅は、たおやかだったような気がする。だが、小説の博雅は無骨な武士だ。琵琶には精通しているが、和歌はとんとわからない。そして、人一倍勇敢だ。
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どの段落も短く、ほぼ一行ごとに改行されているので、まるで脚本を読んでいるように感じる。毎回登場人物の説明にはじまり、博雅と清明が酒を酌み交わして、
「ゆこう」
「ゆこう」
そういうことになった。*1
というお決りのセリフの後に鬼退治をする。そんな型があるのも、なんだか連続ドラマのようだ。
平安の時代がとっつきやすく読者の前に広がる。それが流行に繋がった一因だと思う。簡単なことを難しく言うのは楽にできてしまう。わかりにくいことを簡単に表すのは、とても難しい。
誰にでもわかる文章を書きたい。しかし、格好をつけるうちにひねくれた文になってしまう。
蛇足だが、二人の酒の肴が羨ましい。素朴なものにこそ、日本酒には合う気がする。