醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

深夜の指導案

多忙な恋人を手伝って、教育実習の指導案を作っている。

一番最後に日程が決まり、最年長である彼は、唯一ひとりの古文担当となった。現代文は現代文なりに大変なのだろうが、古文は文法も教えなくてはならず、調べものが増える。荷が重い。

受験時代のあるかなきかの記憶を掘り起こし、四段活用だの下二段活用だののプリントをつくる。昨夜は徹夜になってしまった。よせばいいのに、傍にいては求めずにいられない。

中学二年生には今昔物語の一説を、中学三年生には方丈記の冒頭を教える。ユーモアに溢れた今昔物語に、心地よい歯切れに真理を落とし込んだ方丈記。どちらにも頭が下がる。何百年という時を越えて、平成の今に残る素晴らしさよ。

そんなものが書けたらどんなにいいだろう。まだまだ、修行の道は長い。