醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

大和和紀 「あさきゆめみし 源氏物語 5」

あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)

あさきゆめみし(5) (講談社漫画文庫)

絶世の美男子もやがて歳をとる。彼の中年の季節は、その栄光とは裏腹に、苦悩に満ちた日々であった。満たされぬ想い。こんなにも、愛されているのに。

若い日々の恋物語も魅力的だが、惹かれるのは彼が頂点を極めた後の物語である。過去の罪か報いか、その苦悩は己れが父院に与えたのと同じもの。

愛というものを知らない人。いっこうに答えてくれない人。それなのに恋しくてたまらない。今はまだ、柏木の想いの方がよくわかる。何年かが経ち、晩年の紫上と同じ程の歳になった頃にもう一度読み返したい。「女には嫉妬する自由さえないのですか」という呟きを、本当の意味でわかるのはまだ先のことだろうから。

それにしても、なんと美しい漫画なのだろう。間の取り方もなんとも素晴らしい。