二号さん ~ 向田邦子 「無名仮名人名簿」
笑わずしては読めない。散々笑った後、ふと考えさせられてしまう。エッセイの名手と呼ばれるこの方の文章は、一度読み始めたらとりこになる。
- 作者: 向田邦子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1983/08
- メディア: 文庫
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先日、銀座松坂屋で開催されていていた向田邦子展を観てきた。「縦の会」に出てくる本妻、二号、三号の実物にお会いする。どきっとする名であるが、万年筆のことである。この三本の万年筆は文庫の表紙にもなっている。陰陽師の挿絵も描いていらっしゃる村上豊さんの画だ。
作家が使用した万年筆には、その人の魂が残っているような気がする。ガラスのケースの向こうに積み上げられた本妻、二号、三号その他は、主を亡くした今でも、ひとりでに向田節を原稿用紙の上に書き連ねそうだ。
「縦書きのノートを使っているのは古文ぐらいかしら」
「本当は横にしないと頭に入らないんだけど」
横書きにされては伊勢物語や土佐日記もびっくりだと思うが、彼女たちに言わせると、縦に書くと、字がだらしなく長くなって嫌だという。
「私は横に書くと、字が蟹みたいになるけど」
と言う私を、不思議そうにみて笑っていた。*1
大学ノートを使い慣れたせいか、白紙に文字を書くと横書きになる。横書きになれた字で縦書きをすると、確かに字が細長く糸のようになってしまう。
慣れているのは横書きだが、本当に好きなのは縦書きだ。本は縦書きであって欲しいし、大学のレポートも縦書きで書いたほうが良い文章が書ける気がする。ネットの世界では縦書きが出来ないのが残念でならない。誰か、縦書きに読み書きできるブラウザを作ってくれないだろうか。