大和和紀 「あさきゆめみし 源氏物語 7」
- 作者: 大和和紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/07/31
- メディア: 文庫
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当代一の貴公子と名高い薫と匂の宮に愛されながら、その苦悩は深まるばかり。誠実な薫と、情熱の宮。恋に長けた気軽な女なら、どちらとも上手くやれるものを、彼女は二人の男の間で揺れるばかり。そして自分の身を引き裂かんとする二人の男たちは、どちらも浮舟自身を愛しているわけではない。薫は亡き大君を投影して、匂の宮は好敵手である薫の一の人として。
うわべだけの愛だったのか。うわべだけの愛の為に浮舟はその身を捨てねばならなかったのか。いや、二人の男をここまで熱心にさせたのは、浮舟自身の魅力もあったからなのだろう。
宇治橋のながき契りは朽ちせじとあやぶむかたに心さわぐな
(あの宇治橋のように末長い二人の契りは朽ちないのに心配ばかりなさいますな)
絶え間のみ世にはあやふき宇治橋を朽ちせぬものとなほたのめとや
(宇治橋の橋の絶え間のようにおいでが途絶えるのを それでも朽ちない橋と思って頼りにせよとおっしゃるのですか)
浮舟が自ら薫の腕の中に飛び込んでいくこの場面が好きだ。少女漫画としての演出なのかもしれないが、胸が熱くなってしまう。
不義の子として生まれた薫は望んでいた仏道とは裏腹に、恋の道に迷い込んでしまう。恋ゆえに命を落した親の血が、彼にも色濃く流れているのだ。
ちょっと少女漫画の甘めの、盛り上げ過多の源氏ですが、私自身が、こういう風に源氏を詠みたい、と思いつつ描きあげた『あさき―』です。(あとがきより)
どうぞ「少女漫画だから」「目がキラキラしてるから」と端から毛嫌いせず、男性にも手にとって欲しい。源氏物語を読んだことのない方ならなおのこと。恋を中心に人生の苦悩を華やかに描いた源氏は、漫画となって鮮やかに浮かび上がる。