醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

お金欲しい? ~ よしもとばなな 「海のふた」

海のふた (中公文庫)

海のふた (中公文庫)

私たちは、ただ、一日のことを一日分だけする暮らしがしたいだけなの。お金は大好きですけど、ありすぎると、困ることもきっとあるんです。*1

先日大学の前の通りを歩いていたら、向こうから綺麗に着飾った女子大生の集団がやってきた。すれ違う時、彼女たちのおしゃべりが耳に飛び込んできた。
「私お金欲しいー」
「私もお金欲しいー」
「私もー」
「私もー」

思わず振り返ってしまう。高そうなスカートの裾がひらひらと風に舞っていた。

お金、お金。欲しいと思えばきりがないもの。だけど、お金があることと豊かなこととは違う。お金に執着するあまりに心が貧しく見えてしまう人を、このごろよく見る。子供たちの将来の夢は「お金持ちになること」。

お金は無いよりもあった方がいいけれど、そんなに要らない。一生のうちに使い切れないお金よりも、一日一日に価値があるんじゃないか。だから主人公のまりの生き方に憧れる。自分の手がいきわたる小さな店で、ルーティンのように見えて全く違う毎日を過ごす日々。それはお金では手にすることのできない贅沢。

本当に欲しいものはお金なんかじゃない。 

*1:よしもとばなな 『海のふた』 (中公文庫) 中央公論新社 2006.6 p212