孤独の飼い馴らし方
去年のちょうど今頃、盛岡で自動車の教習を受けていた。合宿中の滞在はビジネスホテル。ヒールでコツコツとロビーの床を鳴らす。ホテル暮らしはなんだか贅沢な気分だ。
家族とも恋人とも友人とも離れ、一ヶ月弱を過ごしたイーハトーヴ、モーリオ。夜の盛岡繁華街で、私はひりひりと孤独について考えていた。ぶらりと立ち寄った本屋で、寂聴さんのこんな本と出会ったから余計に。
- 作者: 瀬戸内寂聴
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1998/10
- メディア: 文庫
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「人間とは生まれる時もひとりなら、死ぬ時もひとりである。また、人と一緒にくらしていてもやはりひとりなのだ。死ぬときまで一緒に死ねる人はいないのだから」*1
盛岡へ行く少し前、一年間続けた派遣職員の仕事をやめ、大学も夏休みになり、自由な時間の多さに気がふれそうになっていた。果てしなく続くかに思える一人の時間。行くあてもなく、することもない。遊ぶといってもこれまでは仕事と授業尽くめの毎日、遊び慣れていないから遊び方がわからない。まるで定年後のサラリーマンのような、はたまた子育てを終えた主婦のような悩み。
友達と会っても夜が来れば一人になってしまう。恋人とだって二十四時間一緒にいられるわけもない。実家に帰るのは悔しい。一人の部屋。白い壁。青いだけの空。蝉の声。誰かと笑いあった日々がすべて幻のように思えた。
盛岡は孤独の延長戦だった。それでも景色が変われば心持は変わる。知らない街を歩き、知らない店で酒を飲み、私はようやく一人でも大丈夫だと思えるようになった。
一人は寂しい、一人は辛い。だけど、自由だ。
盛岡の夏から一年が経ち、また偶然に「孤独」を書いた本と出逢う。懐かしさとあいまって手にとった。
もともと一人でいるのは好きだった。だけれど、一人でいる時に感じる敗北感は何なのだろう。鴻上さんは「友達100人できるかな♪」の歌が刷り込みになっていると言う*2。「友達は多い方がいい」という価値観は、絶対じゃないのに。
- 作者: 鴻上尚史
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2006/06/10
- メディア: 単行本
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弊害は例えばSNSのミクシィを始めると、むくむくと首をもたげる。ハンドルネームの隣に常に、登録している友人の数が常に表示されるから、なんだか焦る。他の人に比べて私は友達が少ないんじゃないか、とか。
友達の価値は、寂しさを紛らわすための数、なんかじゃないのにね。