醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

まぶいを落とす ~ よしもとばなな 「なんくるなく、ない ―沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか―」

ばななさんの眼で見た沖縄。そこには大和が忘れてきてしまったものが残されている。

 大学時代を東京で過ごした学さんがなにげなく「大和にはまぶいの抜けたままの人がいっぱいいて驚いた」と言った。〔中略〕
 私がお台場で、渋谷で、新宿で、電車の中で感じ、お店の店員さんにもよく感じるあの感じ、人間と向き合っているのに、誰もいないような感じは、大勢人がいるのに、みんな薄く見える感じは、それなんだ、と思った。*1

田舎から東京郊外に越してきた時、驚いたのは擦れ違う人同士が挨拶をしないということだった。繁華街ならいちいち挨拶しないのも当たり前だと思うが、住宅街の細い路地で、周りに他の人がいないときも挨拶はしないようだ。

田舎では、とりあえず擦れ違ったら知らない人にも目礼くらいはしたのだけれど……。越してきたばかりの頃、「こんにちはー」という度に怪訝な顔をされるので困ってしまった。そしていつしか、私も挨拶をするのをやめてしまった。まるで「まぶい(魂)」が無いもの同士のように、無言で顔も見ずにすれ違う。

そんなとき、とても田舎が恋しくなる。
「こんにちはー」
「おー、にしゃー(あなたは)どこんちの娘っこじゃ」
「次郎さんとこに下宿してるんですー」
「おーおー、次郎の孫きゃ」
「いやー、そういうわけではー」

と、なんとなく会話が始まってしまう、あの感じ!

さて、いつのまにか沖縄関連の本が積みあがってしまった。

沖縄ナビ―沖縄の旅の秘訣をとことんガイド

沖縄ナビ―沖縄の旅の秘訣をとことんガイド

タビリエ 沖縄 (タビリエ (37))

タビリエ 沖縄 (タビリエ (37))

コアなガイドブックと、普通のガイドブック。選んでいるうちに「なんくるない」のピンキーちゃんが本屋で店員さんに怒鳴られるシーンを思い出してしまった。

沖縄スタイル14 (エイムック 1232)

沖縄スタイル14 (エイムック 1232)

沖縄初心者の私は、この雑誌で南部と中部と北部の違いを知る。北部を渇望する。

*1:よしもとばなな 『なんくるなく、ない ―沖縄(ちょっとだけ奄美)旅の日記ほか―』 (新潮文庫) 新潮社 2006.4 p.57