ほんとうの幸福 ~ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜 第三次稿」
広く知られた最終稿よりも、ブルカニロ博士の登場する第三次稿が好きです。カムパネルラの死が決定的でなく、ラストがほんのりと明るいから。そして何より、最後に車内に現れた「青白い顔の瘠せた大人」(彼はブルカニロ博士の幻影でしょうか)の言葉が、そしてジョバンニの決意が、ガツンと胸に響きます。
宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか (ちくま文庫)
- 作者: 宮沢賢治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1985/12
- メディア: 文庫
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みんながめいめいじぶんの神さまがほんたうの神さまだといふだらう、けれどもお互ほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれるだらう。それからぼくたちの心がいゝとかわるいとか議論するだらう。そして勝負がつかないだらう。けれどもしおもへがほんたうに勉強して実験でちゃんとほんたうの考とうその考とを分けてしまへばその実験の方法さへきまればもう信仰も化学と同じやうになる。*1
今世界中で議論されて、それが為に多くの人が犠牲になっているこの問題を、賢治は物語の中に映しこみました。そして、それよりもっと大きな、とてつもないものも。