イ・ジュンイク 「王の男」
- 作者: キムテウン,チェソクファン,前川奈緒
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/11
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
公式HP:王の男 FAN site - 映画「王の男」応援サイト
友人に誘われ、今日公開の映画(舞台挨拶付き)を見に行ってきた。初めて見る生の舞台挨拶。しかし昨夜コンタクトレンズを紛失してしまい、度の低い眼鏡で出向いたのでよく見えなかった。残念だ。
以前に唯一観た韓国映画「オアシス」は、そのテーマの重さや俳優陣の演技力に圧倒された。「王の男」もエンターテイメントとしての魅力に目を見開いてしまう。韓国映画、恐るべし。
本作は十六世紀初頭に実際に起きた事件をもととして作られている。映画より前には、「爾」というタイトルで舞台劇として上演されていたそうだ。主人公は二人の旅芸人。うち一人は女形である。「王の男」というタイトルはわかりづらいと思う。「王が愛した男」という意味だろうか。女形であるコンギル(イ・ジュンギ)は、舞台を離れても“女”として生きているようであった。
旅芸人のチャンセン(カム・ウソン)とコンギル。二人の絆は「男同士の友情」の域を出ているように思われた。地方の有力者に売られようとするコンギルを、必死で守るチャンセン。物語の終盤、コンギルの決断に苛立つチャンセンの中には、芸人仲間の裏切りとしての怒りではなく、嫉妬が渦巻いているように見えた。
ただ、二人の間の性的な関わりは描かれていない(暗示はされているかもしれない)。もし主人公が男と女であり、恋愛感情をあからさまに表していたら、この物語の持つ悲惨さはもっと形を変えていただろう。生々しい愛憎劇が、銀幕の向こうで繰り広げられたはずだ。そうで無いことに、少しほっとする。「王の女」ではなくて良かった。
本作品は人間劇としての魅力だけでなく、芸や芝居を見せるエンターテイメントとしての面白さも大きい。チャンセンとコンギルの綱渡りや、王を皮肉った芝居など、下世話なジョークに思わず噴き出してしまう。
チャンセンの眼の熱さ、コンギルの美貌に見惚れた。しかし私が釘付けになったのは、弟分芸人ユッカプを演じたユ・ヘジンだった。映画の出来、不出来を支えるのは、脇役の個性と演技力の素晴らしさだと改めて思う。