逃避行
愛してるの。愛してるの。愛してるの。
なんど口に出しても嘘っぽく聴こえる。
愛してるって、なんだろう。
アルバイトが終わったとたん、日々がとてつもなく忙しくなった。
三年ぶりに会う友人と浅草で花見をする。
五年ぶりに会う友人と新宿で花見をする。
十年ぶりに会う友人と高崎で花見をする。
恋にかまけていた長い時間を思う。
恋人の為にいつでも予定は空白だった。
いつ掛かってくるかわからない電話。
今日は会えるか、明日は会えるか。
わからないから、いつでも待っていた。じっと、待っていた。
もう、待たないことに決める。ほんとうは待っているのだけれど、待たないふりをする。
どんどん手帳を埋めていく。会いたくて、会えずにいた友人に連絡をする。
それでも、結局流される。
明日の朝、恋人と旅に出る。行く先は、そうだね、きっと、遠く。