醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

現実はこんなにも簡単に捨ててしまえる

伊豆半島をぐるりと廻る。細い路地に迷い込んだら、その先に真鶴駅が現われた。真鶴。ついてくるもの、がいるような気になる。

真鶴

真鶴

小説の舞台を旅するのは心もとない。現実がどんどん遠ざかる。裏返ってしまう。物語の中こそが現実であるかのように。

窓から首を伸ばし、「砂」という民宿を探してみる。失踪した夫の行方について想像する。黙り込んだ私を、男がいぶかしげな顔をして覗き込む。

大室山に登った。何にも生えていない、ざらりとした山。山頂からシャボテン公園の屋根が見えた。ペリカンに噛まれた雫石を思う。

王国―その1 アンドロメダ・ハイツ―

王国―その1 アンドロメダ・ハイツ―

戸田には日没前に辿りついた。店先の水槽でタカアシガ二が揺れている。侘しい。海がゆるゆると波打つ。海のふたをあける季節が近づいている。

海のふた (中公文庫)

海のふた (中公文庫)