現実はこんなにも簡単に捨ててしまえる
伊豆半島をぐるりと廻る。細い路地に迷い込んだら、その先に真鶴駅が現われた。真鶴。ついてくるもの、がいるような気になる。
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/10
- メディア: 単行本
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小説の舞台を旅するのは心もとない。現実がどんどん遠ざかる。裏返ってしまう。物語の中こそが現実であるかのように。
窓から首を伸ばし、「砂」という民宿を探してみる。失踪した夫の行方について想像する。黙り込んだ私を、男がいぶかしげな顔をして覗き込む。
大室山に登った。何にも生えていない、ざらりとした山。山頂からシャボテン公園の屋根が見えた。ペリカンに噛まれた雫石を思う。
- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/08/22
- メディア: 単行本
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戸田には日没前に辿りついた。店先の水槽でタカアシガ二が揺れている。侘しい。海がゆるゆると波打つ。海のふたをあける季節が近づいている。
- 作者: よしもとばなな
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/06
- メディア: 文庫
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