醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

遺伝子組み換え食品って?「しあわせな食事のための映画たち」@逗子シネマ・アミーゴ

前回書いた水族館劇場のこと。感想を書くのは、せめて夢野久作の「ドグラ・マグラ」を読んでからにしようと思ってただいま読書中。待て、次回!

NPO法人アグリアート主催の「しあわせな食事のための映画たち*1 」を観に行ってきました。会場は逗子のシネマ・アミーゴ。映画を通して「しあわせな食事」とは何かを考える企画で、今回はPart2。会期によってテーマが変わります。観てきたのは12月10日(土)〜12月16(金)上映の「テーマ:種子と農業」。上映作品は『遺伝子組み換えNON!〜フランスからのメッセージ〜』(フランス)と、『パーシー・シュマイザー、モンサントとたたかう』(ドイツ)の二本立て。

遺伝子組み換え食品。ぱっと思い浮かぶのは、大豆くらい? スーパーで納豆を買うとき、ちょっと気にする。原材料に「大豆(遺伝子組み換えでない)」と書いてあるものを探す。そういうものを食べてさえいれば、遺伝子組み換え食品なんて遠い存在のものなんだと思っていた。だけど今や、そう言ってはいられない状況に有るらしい。

ある除草剤への耐性を持つ、遺伝子組み換えの菜種をつくる。それをある農家が導入する。遺伝子組み換え菜種が育つ畑。虫たちには、遺伝子組み換えの畑だろうと有機農業の畑だろうと境界線は無い。遺伝子組み換え菜種の花粉をまとった虫が他所の畑の菜種に舞い降りたら? 風にだって境界は無い。遺伝子組み換え菜種の種が、風に舞って他所の畑に混ざり込んだら? 遺伝子組み換え菜種もそうでない菜種も見た目は同じ。知らず知らずのうちに広がっていく。それだけじゃない。養蜂場の蜜蜂が遺伝子組み換え植物の蜜を集めてきたならば、いつのまにかハチミツだって遺伝子組み換え食品になってしまう。なにが安全でなにがそうじゃないのか、おれたちにはもうさっぱりわからない。

上映の後のゲストトークで、農業ジャーナリストの大野和興氏は言った。「遺伝子組み換えは、核と似ている。」命に作用するものであること。一度自然界に出してしまったら、もう人間の手では止めることができないところ。人間は自分たちの技術に溺れて、高をくくっているだけだとおれは思ってしまう。除草剤の毒にも負けない植物、殺虫作用を持つ植物。映画の中で、ある農家は「こいつらはフランケンシュタインだ」と言った。存在しないはずの化け物。「食べても安全です」という言葉は、「原子力発電所は安全です」という言葉の無責任さによく似ている。そしてもう、人間にはどのくらい遺伝子組み換えの生物がこの地上にはびこっているのか判断できない。どのくらい放射性物質が降り注いでいるのかわからないのと同じように。

国がらみの一大プロジェクト。原子力と、遺伝子操作。政治と経済のために、おれたちは自分の手で自分の首を絞め続けている。

いんふぉめーしょん

「しあわせな食事のための映画たち」を主催するアグリアートの代表・畠山順さんは、ヒグラシ文庫の日月曜マスターでもあります。人と人とのつながりが広がって、新しい世界が見えてくる。

今回のプログラムの上映は12月16日まで続きます。大野和興氏のトークはUSTREAM*2で公開されていますので、ぜひ。

*1:http://www.agriart.jp/ivent/index.html

*2:http://www.ustream.tv/recorded/19040393