〔おすすめ本〕金子光晴「女への弁」
最近は金子光晴を読んでいる。友部正人の「絵葉書」という歌が好きだから。
図書館で借りてきた本は、金子光晴の詩や散文に写真をつけたもの。妻の不倫や生活苦の果て、詩を捨てた詩人が旅した途を後の写真家が辿ったもの。
- 作者: 金子光晴,横山良一
- 出版社/メーカー: 情報センター出版局
- 発売日: 1998/03
- メディア: 単行本
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女への弁
女のいふことばは、
いかなることもゆるすべし。
女のしでかしたあやまちに
さまで心をさゆるなかれ。女のうそ、女の気まぐれ、放埒は
女のきものの花どりのやうに
それはみな、女のあやなれば、
ほめはやしつつながむべきもの盗むとも、欺くとも、咎めるな。
ひと目をぬすんで、女たちが
他の男としのびあふとも、妬んだり
面子をふり廻したりすることなかれ。いつ、いかなる場合にも寛容なれ。
心ゆたかなれ。女こそは花の花。
だが、愛のすべしらぬ偽りの女、
その女だけは蔑め、それは女であつて女でないものだ。
なんどもおなじひとと離婚と再婚を繰り返した。そうしてこういう詞が出てくるとは、なんと器の大きな、素敵なことだろうか。
女であるおれは、もっと放埒に、不埒に、気まぐれに、うそをついて、あやまちを繰り返して生きねばと思う。愛のすべしる女であるために。