死はとなりに
五月二十四日。母が死んだ。
いつかはそんな日も来るのだろうと覚悟はしていたが、まさかこんなに早くやってくるとは思わなんだ。
葬儀屋の、民宿みたいな控え室。朝の陽射しが妙に明るい。母の亡骸の傍らでこうしてノートを広げていると、まだ母と同じ家に暮らしていた幼い日を思い出す。こうしてよく、午睡する母の隣で宿題をしていたっけ。
人生は有限だ。当たり前だけど。
おれは生きているだろうか。おれはおれの人生を、生きているだろうか。
誰かが(テレビが? 雑誌が? 友人が? 親戚が? 世間が?)良いと言った生き方に乗っかって、安心ばかりを追い求めていないか? そのくせ毎日不満ばかり抱えて、ただ日にちを数えて過ごしてはいないか?