手帖
iPhoneにスケジュールアプリを入れてみる。みんなが使っているのをみて羨ましくなって。
人生でいちばん忙しかったのは大学生のときだ。派遣社員をしながら夜学へ通うというのはなかなかハードだった。当時の手帖は書き込みだらけで隙間もない。随分と紙の手帖にはお世話になった。
卒業して自分の食い扶持を自分で稼ぐようになってからのほうが時間にゆとりができた、というのはなんともへんな話。レポートや試験や毎日の課題に追われることもなくなり、
仕事だけしていれば回っていく毎日。それもそうだ、おれは書く時間と余力を残しておくために、最低限生活できる賃金を得る為だけの立場を選んだのだから。そうしてそのくせ、いまだ殆ど書けずにいるのだけら。
手帖はすっかり白くなった。職場と飲み屋と自宅の三角形をぐるぐると回り続ける。時折入る予定は頭の中に入れておけばこと足りる。
けれどそれは、やすらぎとは違う。
休みに備えて引き継ぎの準備をばたばたとする。スタッフのタイムカードを集計してFAXする。
アジア風焼きそばと、アジア風鶏の唐揚げの惣菜をかって帰る。海の家が終わってしまう淋しさを味わう。缶ビール。安いテーブルワインを買ってきたけど、どっと疲れが出てしまい飲めなかった。畳の上でごろごろする。
深夜、旅に出る準備。おれの旅支度はあっという間に終わる。