醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕夜明けの飛行機

旅にでるなら夜の飛行機
つぶやくあなた セクシィ

(下田逸郎「セクシィ」より)

朝四時起き。平日早朝の鎌倉を発つ。朝早いのに、ラッシュ時よりも電車内でパソコンを広げて仕事をしている人が多い。ご苦労様です。空港でサンドイッチとコーヒー。羽田を飛び立つ。10年ぶりの飛行機だ。東京湾を行き交うタンカー。濃紺の海に白い線。雲の上から地上を見下ろす。南へ行くに連れ、海は明るく青く澄んでいく。

那覇に昼前に着く。二両編成のゆいレールに乗って泊港へ。港すぐそばの、地元の人しか買いに来ないであろう出前の寿司屋?のイートイン(というか、長机?)でウニいくらマグロ丼。なぜ沖縄へ来て北海の幸? まぁいいのだ、美味しいのだから。

ビールを買って高速船に乗り込む。初めての高速船はアトラクションのような縦揺れ。船酔いで、350ml缶が飲み干せない。予定よりも早く座間味へ着く。船着き場で酔いを覚ます。いたるところに鯨の彫刻?がある。ウェットスーツを着た人たちが行き交う。

なかやまぐわぁへ。かわいらしいゲストハウスだ。荷物をおろして少し休憩する。ビーチまで散歩。満潮時には海亀に会えるという。海亀の姿は見えなかったけれど、砂浜に落ちている貝殻にかなりの確率でヤドカリが入っていることにおどろく。ヤドカリは黒いキュートな目で、人間の姿をみとめるとサッとハサミで入り口に蓋をして貝のなかに閉じこもってしまう。

あまりにも、海水が透明だ。ごくごくと飲めてしまいそうだ。深いところは青い水彩絵の具を溶かしたみたいな色だ。白い砂は珊瑚と貝殻でできている。その砂とまったく同じ色をした小さな蟹が、流れ星のように浜を駆けてゆく。イタチのようなやつが背中を丸めて、砂浜をちょこまかと飛び跳ねている。やがて西の空がブーゲンビリアのような赤紫に染まる。自動販売機のボタンに白いヤモリがはりついて、ケケケと鳴く。

東の山から玉子の黄身みたいなまんまるのブルームーンが顔を出す。その存在感の大きさと違和感といったら。ぬっ、と出てきて、次には手を山の端にかけて、細い脚でよっこらしょ、と跨いで来そうですらあった。すっかりくらくなる。凪の海に月明かりが映り、銀色に輝く路をつくる。

そんな光景を、高校生の頃小説に書いた。本当にそんな景色があるなんて。空想で書いた世界と、後年ばったり出逢うのはよくあることだけど。突然、ポケットのiPhoneからBGMのように、暗い路でサザンの曲がかかる。沖縄は今がお盆だそうだ。ちょうど墓地の前を歩いていた。彼岸に棲む人のいたずらだったのだろうか。

飲み屋を探しに行く。三軒茶屋(なぜ座間味で?)で生ビール、ゴーヤチャンプルー、あしてびち。
三楽で泡盛、塩辛、もずく酢。地元の人とバイト君たちが飲んでいる。

島の有線が津波警報を告げている。店を出て、島唯一のスーパーで缶ビールと亀せんべい、カップのモズクを買う。どこでもオリオンビールが買えて嬉しい。ギョサンやら島ぞうりやら、極彩色のタオルやら売っていて面白い。つい長いしそうになる。

宿に戻り、ビールとつまみを持って屋上へ昇る。月明かり。海は静かだ。深夜、警報は解除される。部屋に戻って泡盛を呑む。