醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

二十八才

定例会の資料を作って、マニュアルも更新する。やっぱり学食が賑やかなので早々に退散する。

ひさしぶりに山田詠美の『放課後の音符』を読み返す。
十七才のサエキくんが恋をしたのは、二十八才の、ボーイッシュだけど真紅の口紅だけをつけた大人の女のひと。大人だけれど、純真なひと。

放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)

放課後の音符(キイノート) (新潮文庫)

二十八才だなんて、遥か先のことだと思っていた。大人になったような気もしないけれど、狡さと汚さばかり覚えた。

十七才の男子から見たおれはどんなだろう。

今日もおれはほとんど化粧せずに、赤い口紅だけ塗って街を歩く。かつて憧れたその人のように。

ヒグラシ文庫でビール、イナダ生ハム風、日本酒、ナス、おすそ分けのトーフ、夏の雪。窓の外で稲光がひかる。

酔っ払って帰って、またギターを弾く。お腹が空いてきて、コンビニへ炭酸水とパスタを買いに行く。