醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

ロバート・キャパ / ゲルダ・タロー 二人の写真家

すこしばかり体調が復活したので、横浜美術館へ行く。ロバート・キャパとゲルダ・タローの写真展*1

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三月だというのに真冬の様な寒々しさ。日曜なのに歩いている人も少ない。無風。美術館の前の水溜まりが鏡の様にビルを映していた。

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Photo by 大町ジロウ*2

ロバート・キャパ(アンドレ・フリードマン)は、戦争の写真を撮り続けた報道写真家。有名な一枚は「崩れ落ちる兵士」という、まさに今銃撃に倒れる男を撮ったもの。「ロバート・キャパ」という名前はあまりにも有名だけれど、実はそれははじめ、女性写真家ゲルダ・タロー(ゲルダ・ポホリレ)と彼とのユニット名だったそうだ。日本人としては「女性なのにタロー?」と思ってしまう。岡本太郎からとった、といわれているそうだ。

最愛の人タローは、撮影中のスペインの戦場で落命する。まだ26歳だった。キャパは彼女の死後も報道写真を撮り続ける。展示場は彼が撮り続けた戦場の写真で埋め尽くされている。恐怖に怯える顔、高揚した叫び、皮肉な笑み、絶命した人。ちょうど観る者の顔の高さに並べられた写真たち。ずらりと一列に並んで、一枚一枚を見る。戦争というものが日常である暮らしを、おれは知らない。けれどそのひと時だけ、そちら側の世界に連れて行かれてしまう。

息がつまる。彼が来日したときの、ほのぼのとした日本の写真にいきあたる。少し気が休まる。

彼も戦地で死んだ。彼の遺したフィルムに最期に残ったのは、やはり戦場の写真だった。

閉館間際までコレクション展も見て回る。最後にミュージアムショップによって、魚のかたちをした醤油入れ(お弁当についてくる、あれ)のガチャガチャをする。ポピュラーな鯛だけじゃなくて、ナポレオンフィッシュ型なんていうのもあり、興奮する。