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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

波照間島へ行ってきました(3/3)

9月5日

波照間最終日。

十時ぎりぎりに荷物をまとめてチェックアウト。宿に荷物を預けて、北側の集落を散歩。「コート盛り」という、かつて物見やぐらとして使われていた、石と土を持った展望台へ登る。海の向こうに西表島が霞んで見える。

「あとふそこ」でソーキそば、オリオンビール。可愛らしい島のおねえさん。

ひとやすみして、今度は島の北端を散策。自転車を飛ばす。北側はお墓が多い。コンクリートで家の形につくられたそれは、いくつもの倉庫が並んでいるように見える。

北側から集落へ戻る途中に慰霊碑があった。戦中、強制的に疎開させられ、疎開先の島でマラリアにかかり命を落とした子どもたちの。ああ、それはなんだか今の日本を見ているようだ。「もう除染が済んだから」と言われて故郷へ戻った子どもたちの未来をみているようだ。

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仲底商店で、どうしてももうひとつアクセサリーを買いたくなり、アメジストの入ったブレスレットを買う。紫。それはなんだか、これからのおれのテーマのような気がしている。慈悲? 慈愛?

もう手に入らないと想っていた泡波のミニボトルがたくさん並んでいた。買い込む。ビールとつまみを買って宿に戻る。

暇そうにしていたら、宿のお父さんが少し早めに港まで送ってくれた。波止場でぼんやりと船を待つ。

帰りの船はあまり揺れなかった。ちょうど揺りかごのような、やさしい揺れ。うたたねをしているうちに石垣港へ到着。ゲストハウスにチェックイン。ゲストハウス…というか、脱法シェアハウスか? オフィスフロアに無理やり間仕切りを入れたようなつくり。無論、部屋に窓はなく、間仕切りの天井側には隙間が空いている。しかしアットホームな宿のお父さん。長期滞在者…というかフリーターの住人たち皆の、優しいお父さんといった感じ。

荷物を置いて街へ繰り出す。酒屋さんをまわってお土産を買う。

友人に紹介してもらったお店はどこも満席。初日に気になっていた店に入ることにする。割烹「しま膳」。阪神ファンらしい。この南の果てで、阪神ファン? 壁にはどでかい黒と黄色のしましまの旗が貼ってあった。音を消して流れているテレビはもちろん野球中継。島の近所のおじさんたちが一人でぷらりとやってくる。どうやら、この店は正解。清福3合瓶。お刺身の盛り合わせ。台風が去ったので活きの良いお刺身がたくさんでうれしい。自家製の〆鯖(メニューには沖縄での呼び方が書いてあったが、メモしておくのを忘れてしまった)が絶品だ。女将さんおすすめの、ふしぎな鱗をした小魚のフライをいただく。全身イガイガしていて、舌にひっかかるそれが妙に心地よい。締めに食べたイカスミ汁にどうしてもご飯を投入したくなり、お願いする。真っ黒いおじや。最高だ。

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さらに呑みに行きたがるジロウを引き摺って宿へ。案の定、隣の部屋の人の寝返りの音までよく聞こえる。なんだかよく眠れず、浅い夢をいくつも見る。

9月6日

バスに乗って空港へ。路線バスはぐるぐると、リゾートホテルをまわって新石垣空港へ向かうので思っていた以上に時間がかかる。着いた初日は夜だったから心細い思いをしていたが、朝方の石垣市街地は賑やかで、現地の女子高生なんかも颯爽と自転車に乗っているさまが見られたりして、うれしい。

空港で八重山そばの食べ納め。羽田直行便に乗り込む。

窓の下に広がる青い海。またね、沖縄。

行きは大学生ばかりだったが、帰りは小さな子ども連ればかりだった。離陸着陸で泣き声があがる。

頭のなかに、書きたいものがたくさんつまっていた。島では時間があるようで、ゆっくりできるゆとりはあんまりなかったかもしれない。島時間というのは、島で住んでみてはじめて味わえるものなのかもしれない。食事の時間やシャワーの時間、洗濯の時間が決まっている宿暮らし、さらに観光をするとなると、何時までに予約して、何時までに集合場所へ行って……かえって時間に追われてしまう。鎌倉時間が恋しくなった。

中断していた小説の続きを機内で書く。頭が柔らかくなっているのか、いつもよりずんずん書ける。

ちょっとくすんだ、見慣れた海の色が眼下に広がって、たくさんの船も見えて、羽田着。京急に乗って逗子へ。なんだか、南国から上京して来たみたいな気分。わー、ビルだー、なんて言いそうになる。

家についてちょっと休んでから、デポへ。いつもの店でいつものようにお酒を呑んで、やっと帰ってきた気分になった。

だだいま。