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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔小説〕 回収処

小説

酒場で独りで呑んでいる女はみんな声を掛けられるのを待っている…わけではないから、そう無粋に口説かないでくれ。

男の目に下心の宿るときは、どういうわけかみな、寄り目がちになる。凝視して服の下まで透視しようとしているのか。何故か誰もが同じ表情を浮かべる。 酔っ払って陽気になって、初めて逢った男を連れて帰る。杯が進むにつれ寄り目がちになっていくその表情が可愛らしいと思う。

女にも性欲があるなんて、と嬉しそうに言う男。馬鹿をいうな、この渇きをあんたに埋められるものか、と白い目で彼らを見やる。

愛されないと、抱かれる価値はないのよと、嘗て諭されたことを思い出す。愛される、か。愛されて、何が嬉しいだろう。

血にまみれた肉体を切望する。その首筋を犬歯で噛み切ってしまいたい。迸る血の臭いに酔いながら、あたしは堪能の夢を見るの。 シーツに残る血痕に、舌を這わせる。 そう、この男はどんな恍惚の表情をしたっけね。 もう何も、覚えてはいない。 生ゴミという名の哀しい残骸を、今日もあたしは回収処まで運ぶ。

さよなら、さようなら。

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