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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

子供の頃、嫌いだったもの。

子供の頃嫌いだったもの。

ハンバーガー、スパゲッティ、生クリームの入ったクレープ。白いご飯、パフェ。アイルクリームののったメロンソーダ、ラーメン、お刺身。

お子様ランチには食べたいものがなくて困った。甘いものが苦手なのは、子供の頃から。ラーメン屋に行くと餃子だけしか食べられなかった。おかずばかりを食べて白いご飯を残してしまうので、最後に醤油をかけてちびちび食べた。内陸の刺身は凍っていて、シャーベットのようにしゃりしゃりした。どうして大人はそれをおかずにご飯が食べられるのか不思議だった。

子供の頃、好きだったもの。

秋刀魚、鮎、岩魚の塩焼き。生姜の味噌漬け、梅干し、十割蕎麦。焼おにぎり、スルメを炙ったの、ホッケの開き。

大人になって何より嬉しかったのは、それらを肴に酒を呑めることだ。もうおれは夕飯に、白いご飯を食べなくてもいいのだ。

刺身の旨さは日本酒を日常的に呑めるようになってから知った。餃子を食べにいって、ご飯でなくビールでお腹を膨らませることのできる至福。

九十半ばまで生きた遠縁の爺さんは、歯が抜けてからというもの飯は喰わず、「米の水」を主食にして陽気に笑っていた。未来の自分を見るようだと思った。(文:野原海明)