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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔小説〕女が女を愛する時

小説

なんとも百合な、官能的な夢を見て目覚める。しばらく布団の上に座ったままぼんやりとする。

同衾している彼女は現実では知らない女で、ゆるいくせのある長い茶色がかった髪をひとつに結い上げている。彼女が懇願するので、その裸の身体をくまなく撫でてやる。すっぽり掌に収まるその乳房を掴み、女の胸とはこんなに柔らかく触り心地の良いものだったかと感心している。自分と同じ作りの裸体に興奮はしない。ただ、その滑らかな感触を味わっている。

彼女の吐く息が熱く重くなる。私は中指を彼女の中心に滑り込ませる。どんなふうに触れれば達するのか、女のことは女がいちばんよく知っている。あっけなく、彼女は身体を震わせて果てる。

そんな夢を見たせいか、十年も前に先輩からもらったヘアピンを、鏡台の奥から引っ張りだして髪に飾っていた。黄色と橙のビーズの組み合わせは、自分では決して買いそうにない色合わせだった。

先輩にも私にもそれぞれ彼氏はいたが、彼女へ寄せる憧れは恋にとてもよく似ていた。触れたいわけでも、ましてや寝たいわけでもないのに、他の女子の前では裸になるのを避ける先輩に「あなたとなら一緒にお風呂に入れる」と言われたときには嬉しくて身震いがした。

とてももてる友達がいる。もて過ぎるせいか女友達がなかなかできないのよ、と嘆いていた。なるほど、と思う。色黒で短い髪の彼女は、お尻が大きいことを別にすれば取り立てて艶かしいところは見当たらない。くりくりとよく動く離れがちの眼は、小動物よりも爬虫類を連想させた。よく笑い、何気なく男の子たちの身体に気軽に触れた。そんな仕草に大抵の男子はいかれてしまうみたいだった。

部屋に遊びに来た彼女を、ふざけて冷たい床に押し倒す。腕の間で笑い転げる彼女の肩は見た目よりずっと華奢で、その浅黒い肌の下にある骨を想うとふいにむらむらとした。きつく抱き締めれば壊れてしまいそうで、だからこそ自分の手で壊してしまいたい。彼女を慕う男子たちの感情とその一瞬シンクロしたようだった。

女が女に惹かれる感情とはなんなのか。肉欲より征服欲に近いそれ。

青い花」の最終巻を買おうかと思って近所の本屋に立ち寄ったが、見つけられなくて「スナックちどり」を買って帰る。(文:野原海明)

青い花(8)(完) (Fx COMICS)

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スナックちどり

スナックちどり