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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔随想〕成人の日


成人式も卒業式も結婚式も法事もせず、生きてきた。斜に構えてそういうことのすべてを莫迦莫迦しく思ってきたが、二十代も最後の年になって、駅前で振り袖の女の子を見かけたりなんかすると、やっぱりちょっとだけ羨ましいような気もしなくはない。

着物には興味があったので実家に送られてきたパンフレットは一応目を通してみた。だけれど、たった一日の為の着物レンタルに大枚はたくのなんて阿呆らしい、それに、みんながおんなじような振り袖着てるところに自分も振り袖着て行ってなんになろう、とゴミ箱に放り込んでしまった。

成人の日の夕暮れに、グレーのジーンズと黒のタートルネックのセーター、白いトレンチコートという「なんとなく大人」な格好をして新幹線に飛び乗る。高崎駅へ着いて、成人式の帰りの同級生たちと待ち合わせる。大規模な中学の同窓会だ。

久しぶりに会う同級生たちに「きれいになった」「雰囲気変わった」「最初、誰だかわからなかった」と言われて嬉しくなって、ビール中ジョッキ五杯おかわりして、ウーロンハイを三杯呑んで、誰かの飲み残したカシスっぽいカクテルを一気飲みして、テーブルに突っ伏してしまった。なんだかんだいって、やっぱり幼かったのである。

中学生時代は憧れるだけで口もきけなかった格好いい男の子が、お姫様抱っこをして居酒屋の外まで運んでくれて、気持ち悪いながらもきゅんきゅんしていたのをぼんやりと覚えている。

救急隊のおにいさんたちに「おー、今年の急性アル中第一号だ」とからかわれる。「これくらいじゃ可愛い酔っぱらいのうちだけど、一緒に呑んでる友達がびっくりするから、お酒は潰れない程度にしなさいね」と諭されながら点滴を打ってもらう。それがおれの成人の日であった。

ハタチなんてガキだよね、いつか自分で「大人になった」と感じられるようになったら、たったひとりの成人式をしよう、と思っていた。三十路を目前にして、そろそろ成人式をしてもいいかな、というような気がしている。

あ、でも既婚で三十路の新成人は、振り袖は着られないのか......!