〔おすすめ本〕満員電車から逃れた先にある未来の働き方とは ~ 「ワーク・シフト ―孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>」
今の人生に何が不満か?
と訊かれたのは三年前のこと。
いや特に不満なんてないけど、しいて言えば「満員電車で通勤すること」くらいかな、と答えた。
朝の満員電車。これから会社に向かう人の顔を見るのが、おれは苦手だった。電車のドアが開くと、みんなレースのように一斉に走りだして階段を駆け登る。その流れに乗れないと、チッと舌打ちされて突き飛ばされる。
なぜ、みんな同じ出勤しなくちゃいけないのか。遅刻をしないように走らなきゃいけないのか。エネルギーをそんなところに消費していちゃもったいないんじゃないか。もっと自由に働けるんじゃないのか。
そしておれは、時間と場所が拘束される仕事を半分に減らした。好きな場所で、好きな時間にやればいい仕事を残りの時間に充てている。そしてそういう働き方は、あと十年もすると、当たり前のことになるようだ。
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- 作者: リンダ・グラットン,池村千秋
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2012/07/28
- メディア: ハードカバー
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著者はロンドン・ビジネススクールの教授、リンダ・グラットン。英タイムズ紙が選んだ「世界のトップビジネス思想家十五人」のうちの一人だ。彼女は、ティーンエイジャーの息子たちが抱き始めた働き方の未来についての疑問に答えようとして、この本の着想を得た。十年後、自分や息子たちはどんな働き方をし、どんな日々を送っているのだろうか?
働き方の未来は暗い?
この本には、架空の人物が数人登場する。まるで小説のように、彼らの2025年のある一日が記される。そしてそれと対比するように、1990年のある日も描かれている。
2025年、ロンドンで働くジルは時間に追われる毎日を送っている。数分刻みのスケジュール。返信しなくてはならない電子メールが次々に届き、時差のある海外のオフィスとネットで会議をする。一日二十四時間、週に七日休みなくフル稼働の毎日だ。
2025年。ムンバイの脳外科医・ローハンは、自宅で手術の準備をしている。遠隔操作で、中国にいる患者へ施術をおこなうのだ。忙しく働く彼は、ほぼ自宅から外へ出掛けることはない。
2025年、カイロ。プログラマーのアモンは、斡旋サイトから発信される求人情報を常にチェックしている。いくつものプロジェクトやコンペを、ネット上でチームを組んでこなしている。彼のオフィスは自宅で、ネットの向こうに友人は大勢いるが、生身の人に会うことは殆ど無い。
インターネットは、働き方をどんどん自由にする。しかし、気を付けなければ、彼らのように生身の人間と会うことの無い生活が当たり前になってしまう。グローバル化が進んで、海外のスタッフと共に働くことも当たり前になる。そうなったら、働く時間は夜も昼も関係がなくなる。
これは暗い働き方の未来の例。なにやら、もうすでに自分の働き方と一致し始めているところがちらほら見えて、背筋が寒くなる。いや、でも、本書で紹介される働き方の未来は、暗いものばかりではない。テクノロジーが進歩を遂げ、世界中の人間がネットでつながるようになった未来、どんな働き方を選べば、いきいきとした毎日を送れるのか。実例はぜひとも、本書を手にとって見て頂ければと思う。
どうすれば明るい働き方の未来が手に入るのか
本書は、働き方を<シフト>することを勧めている。
なんでも器用にこなせる「ゼネラリスト」は、未来の働き方において価値はない。データはネット上にいくらでも転がっているから、ゼネラリストには誰でもなれる。そうではなく、自分にしかできない専門性を持たなくてはならない。それも、ひとつの分野にしがみつくのではなく、「連続スペシャリスト」になることが望まれる。そのためには、あくまでも「自分の好きな仕事」を選び、自らをプロデュースするセルフマーケティングを学ぶ必要がある。
三種類の人的ネットワークを持つこと。一つは、仕事の同士となる「ポッセ」。これは、比較的少人数の集団で、必要があればすぐにお互いの力を借りることができるメンバーの集まりだ。専門分野や能力のレベルが近く、信頼関係が厚い。二つ目は、「ビッグクラウド」。ソーシャルネットワーク上の「友達の友達」くらいの関係。すごく親しいわけではないが、アイデアをもたらしてくれる。三つ目は、「自己再生のコミュニティ」。バーチャルではなく、生身で会える友人たち。冗談を言ったり、ただ一緒に食事したり呑んだりするつながり。
そして、お金や物の為ばかりに働くのではなく、情熱を傾けられる経験を得る為に働くことに重点をずらす。生活する上でお金を得ることは重要だが、必要以上に持つ必要はないことに皆気付き始めている。それよりも、経験を得るために仕事をすることを選ぶ。
さて十年後、おれは、あなたは、どんな働き方をしているのだろうか。
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
- 作者: リンダ・グラットン,池村千秋
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ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>
- 作者: リンダグラットン
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