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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

「女」に「家」と書いて、嫁。

結婚式続きの週末だった。
「披露パーティーとか、おれたちもする?」
とジロウが訊く。

いや、でも「両家のなんとか」とか、「親族一同」とかをやらなくちゃいけないのなら、それはいやだなぁと思う。おれは自分の家や親から逃れるために、籍を入れたのだから。

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「海明ちゃんて、結婚した後の本名なんだったけ。大町海明?」
ときどきそんなふうに訊かれるけれど、大町も野原も芸名だから、おれは昔も今も野原海明なのです。

ジロウの母親に、未だに自分の名を名乗れずにいる。残念ながら○○家の嫁にはなれないし、出来の良い義理の娘にもなれない。そういえば「嫁」という漢字は「女」に「家」だし、「娘」とは「女」に「良」か。ただ微笑んでいるだけの、世間知らずの気の利かない幼妻……ということにしておけばいいかなと思っていたが、長い付き合いになればそういうわけにもいかないよね。

野原海明。小説家という怪しい職業。料理はしない。義理の人付き合いはしない。毎晩独りで出掛けて浴びるほど酒を呑む。不惑を越えた息子が突然連れてきた、孫とあまり年の変わらない小娘。「きちんと」とか「ちゃんと」とか「世間様」とか、全部蹴り飛ばして生きている非常識者。

おれがおれのままで会いに行ったなら、絶対嫌われてしまうんだろうな。嫌われないようにしないといけないと思っていたが、自分を偽ってまで良い嫁はできないよなぁ。