九月一日
朝の汽車でいつしよに戻る、そして河へ飛びこんで泳いだ、かうでもしなければ、心身のおきどころがないのだ、午後また泳いだ、六根清浄、六根清浄。
二百十日、大震災記念日、昨日の今日だ、つゝましく生活しよう。
今日も夕立がきた、降れ降れ、流せ流せ、洗へ洗へ、すべてを浄化せよ。
後悔の朝の水を泳ぎまはる
種田山頭火「行乞記(四)昭和七年」*1
河の水面は炭酸水のように雨を弾き返している。いっとき雨脚が強まり、机の上まで濡らした。
久しぶりに万年筆を手に取った。引っ越して以降、どこにしまったのかも忘れていた。そう言えば自分の手書きの文字を、契約書か封筒の宛名でしかしばらく見ていなかった。実に半年ぶりに、原稿用紙に並んだ我が筆跡を見る。