醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

文学って何だ!?

お絵かきの延長で漫画を描くようになって、小学校高学年になるとちょっと背伸びしてファンタジーを書くようになった。メルヘンでなく、血みどろに戦ったり、世界が終わったりする暗いやつを。

高校ではログインすればパソコンが自由に使えるので嬉しくて、とにかく書きまくった。部活を5つ兼部して、そのうち2つが部長という超ハードな日々だったたけれど、30分でも時間がとれればパソコン室に走って行った。

自然環境科を卒業した後は、山でフィールド調査とネイチャーガイドをして食っていこうと思っていた。しかし、いかんせん実験とかが性に合わない。それならば文章を書く人になって、理系の人たちが研究している難しいことを噛み砕いて、わかりやすい文章や物語にしてしまえばいいんじゃないか。そうだ、大学は芸術学部か文学部に行こう。

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意気揚々と大阪芸大オープンキャンパスに行く。おかっぱ頭の草間彌生みたいな文芸学科の教授に思いを力説する。
たつみや章みたいに、環境問題に興味を持ってもらえるような童話を書きたいんです!」
教授はのけぞって笑った。
「貴方ね、文学とは、そういうものではないのよ」

なんだなんだ、ブンガクってなんだ。疑問を抱えつつ、京都精華大学文化表現学科のAO入試を受ける。集団討論で何を話したか忘れたが、とにかくベラベラとしゃべっていたように思う。帰りに、狸みたいな教授に引き止められる。
「君ね、うちの大学じゃなくて、ちゃんと創作をできるところを受けなさい。早稲田の第二文学部とか」

当時、おれの偏差値は40くらいだったんじゃないか。わ、早稲田ですか? ご冗談を……と思っていたのに、その言葉が忘れられない。1年浪人して早稲田に挑戦することを決める。

とりあえず記念受験的に、現役のうちに早稲田の入試を受けてみた。全然解けない。時間も足らない。打ちのめされて群馬に帰る。悔しい。見ておれ、早稲田め。

もともと得意だった国語は、古語を一から勉強しなおしたら点が取れるようになった。英語もコツコツやった結果、合格ラインぎりぎりのところまでは到達できるようになった。どうにかすれすれで二文に合格する。

その頃書こうと思っていたのは、身体を傷つけるファッションについて。髪を染め、ピアスを空け、タトゥーを入れるようなこと。そうこうしているうちに『蛇とピアス』が芥川賞を取って、先を越されたと悔しかった。

おれは何を書いたらいいの? 小説家志望だった当時の恋人はこういった。
「子どもから年寄りまで楽しめるものを書きなさい。目指すんなら直木賞だ。意味の分からない文学なんて書く必要がない」
ええ、でも、そんな、エンタメなんて。大阪芸大の教授のことを思い出す。いや違うんだ、おれはなんだかわからないけれど、ブンガクを書きたいんだ。文章で表す芸術ってやつを。

でも、大学で勉強してみても、ブンガクってなんなのか、全然わからない。私小説みたいな恥ずかしいものをいつもいつも書いていたけれど、書いている途中で自分は何を書きたいのかわからなくなる。
おれの作品の卵は、孵ることがあるんだろうか。ポケモンGOの卵のように、歩き続けたらいつか孵化するんだろうか。残りはいったい、何キロメートルあるんだろうか。