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醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕京都から福島を経由して鎌倉に帰る

近しい友人があっけないことで死んでしまう夢を見る。確かに五十まで生きた彼の姿を想像するのは難しいと思っていたが、そんなにあっけなく逝くとは思わなかった。涙は出ない。ただ、今日は、彼が生きていた昨日とは違う世界になってしまったのだと思う。柳の葉が日光を反射させてきらきらと光る。彼が残した店で、彼が作ったという最後のバームクーヘンをいただく。甘い物は苦手なおれが、一番こってりとした、生クリームの乗ったものを選ぶ。半月のように半分だけが透明な寒天質でできているそれは、宝石のように美しい。

目が覚める。彼が生きている世界に感謝する。現実の彼はパテシィエではなく、ミュージシャンである。

   座右銘として
おこるな しやべるな むさぼるな
  ゆつくりあるけ しつかりあるけ

[種田山頭火 行乞記 (二)一九三一(昭和六)年]

遅くまで呑んでいたわりにすっきりと起きた。シーツを洗い、鍵屋荘を後にする。新幹線で京都から東京を経由して、新白河で降りて須賀川へと向かう。きっぷを買っていたら、隣に並んでいたサラリーマンも「新幹線は新白河まで。乗車券は鏡石(須賀川の隣の駅)まで」と言っていて、ぎょっとする。

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京都駅で本を3冊買う。文庫本はウィンドブレーカーのポケットに入るところがいい。東京駅について、東海道新幹線から東北新幹線に乗り換える。乗り慣れない東海道新幹線のコンコースは知らない駅のようだが、改札を一つ抜けだけでおなじみの景色となる。キオスクで駅弁を買う。東北へ行くときの駅弁は、イクラがたっぷりのっているものと決めている。

須賀川はさすがにまだ寒い。アリーナの会議室へ向かう。1時間だけ打ち合わせをして、またすぐに新幹線で帰路につく。さすがに草臥れたので、東京駅でシンハービールとガパオ。鎌倉について、呑みに行く気力はなかったのでワインとスルメとチーズ(黒胡椒入り)を買う。