醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

「図書館総合展2017 フォーラム in武蔵野」に行って来ました。(後半)

図書館総合展2017 フォーラム in武蔵野の第3部「年間190万人を集める武蔵野プレイスの設計と実践」のまとめです。登壇者は、武蔵野プレイス立ち上げに携わった前田洋一氏(武蔵野生涯学習振興事業団 理事長)と、野末俊比古先生(青山学院大学教育人間科学部准教授)。

前半はこちらをどうぞ。
mia.hateblo.jp

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雑誌タイトル数を充実させて、ふらりと立ち寄れる場へ

何か用事があって来館する「目的的利用」ではなく、ふらりと立ち寄れる「状況的利用」を目指す武蔵野プレイスでは、雑誌のタイトル数充実に力を入れている。当初目標は1000タイトル(!)だったそうだが、さすがにそこまでは難しいということで、現在は600タイトルを取りそろえている。武蔵野市立中央図書館が400タイトルなので、これは思い切った数なのだ。

図書館で取り扱う資料には「専門性」が重視されるものと、「即時性」が求められるものとがある。本は、専門性には強いが即時性には弱い。新聞は、専門性が無いわけではないが、重きを置いているのは即時性のほうだ。一方で雑誌は、専門性と即時性、どちらも「そこそこ」だが、両方をカバーしている。なおかつそこには「娯楽性」もある。状況的利用を目指す武蔵野プレイスにはぴったりの資料である。

「静」と「音」の使い分け

吹き抜けを取り入れたフロアは、それぞれ「静」と「音」とで区分けされている。例えばにぎやかなティーンズライブラリーは「音」のフロアとなる。アート関係の資料をこのすぐ近くに持ってきたのは、アートを通して子どもたちに本へ興味を持ってもらいたかったから。基本的には、子どもたちがはしゃいでいても大人の来館者がイライラとしないよう、子どもと大人がなるべく接触しないようにらせん階段を取り入れている。

生活関連系図書は、図書館で一般的な並べ方である日本十進分類法(NDC)ではなく、独自のテーマで並べられている。この空間は子どものフロアにも近く、ざわざわとしているが、利用者にアンケートをしてみると「この場所は静かじゃないのがありがたい」という声が上がってくるそうだ。一緒に連れてきた子どもが多少騒いでいても気にせずに滞在できるからだ。

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返却棚にもICを導入

自動貸出機はエントランスに集中させている。これは、貸出処理が混雑する階と、空いてしまう階とが生まれるのを避けるためだ。返却されたばかりの本を一時的に置く棚もエントランスにある。特徴的なのは、この返却棚にもICを導入していることだ。

もっとも人気がある本は、予約がかかるので人気が途切れるまで本棚に並ぶことはない。そこまでではないけれど、「誰かが興味を持って借りてみた本」が返却棚には集まってくる。自然に生まれる特別展示コーナーのようだ。

しかし、この返却棚にある本は、通常では蔵書検索機(以下「OPAC」)で検索すると「返却処理はされているけれど、所定の棚に無い本」となってしまう。そこで返却棚にICを導入すると、返却棚に置かれていることがすぐにわかり、所在不明となる時間が短縮されるのだ。

この返却棚は大変人気だという。「返却棚をじっくりとみたいので、すぐに片付けないで一日くらい置いておいてほしい」という意見もよせられたそうだ(残念ながら、その希望に応えてしまうとすぐに返却棚がパンパンになってしまうので、丁重にお断りしたとのこと)。

カフェも複合する機能の一つだと考える

武蔵野プレイスといえば、1階中央にあるカフェも有名だ(ARG刊の雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド』12号の特集「図書館×カフェ」でも紹介させていただきました。野原執筆担当です)。

www.fujisan.co.jp

なんとこのカフェは、図書館フロア内にありながらほとんど仕切りを設けていない。借りる前の雑誌や本をカフェに持ち込んでも良い。閲覧席の延長みたいなイメージだ。「本をカフェで汚されてしまったらどうするの?」という反対も、もちろんあった。しかし、図書館の本を借りて持ち帰ったら、飲食しながら読むこともあるよね? お酒を飲みながらリラックスして読んだりもするよね? ということで、思い切って挑戦してみたのだそうだ。

カフェのプロポーザル時にはアルコールはNGとしていたが、現在では提供している。「教育施設でアルコールを出すなんて!」という批判もあった。しかし武蔵野プレイスの「状況的利用」を増やしていくというコンセプトに、アルコールを楽しみながらゆったりと読書をするとのはしっくりくる。従来の「教育施設だから」という考えを打ち破り、コミュニティの場、みんなの居場所としての機能を重視したのだ。提供を始めてから今に至るまで、アルコールによる事故は一度も起きていないそうだ。人の目があるので、貸出された本よりも汚破損は少ないのだという。

このカフェも、武蔵野プレイスの複合機能のうちの一つとして考えられている。カフェ事業者を決めるプロポーザルでは、クオリティを高めること(公共施設のカフェだからといって安いメニューにしなくてよい)、プレイスのミッションを理解して機能を実現させることを条件とした。そうして現在営業している「Café Fermata」では、定期的に本や映画に関するイベントも開催されている。

Café Fermata|武蔵野プレイス1階Café Fermata|武蔵野プレイス1階

開館当初は「料理の匂いが気になって嫌だ」というクレームも寄せられた。しかし、それらの利用者の声を掲示し、そこに何度も何度も丁寧に武蔵野プレイスのコンセプトであると説明することで、応援してくれる利用者も出てきたそうだ。

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武蔵野プレイスには有料のワーキングスペースもある。ちょっと仕事をしにやってきた利用者が、疲れたらカフェでリフレッシュをし、調べ物の必要があればすぐに図書館フロアに行ける。ビジネスパーソンの利用者から、「自分の希望がすべてまかなえる公共施設に始めて出会った」という嬉しい声も寄せられたそうだ。

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質疑応答

質疑には、野末俊比古先生の提案から「スグキク」というWebサービスが取り入れられた。これは、参加者が自分のスマートフォンから、登壇者に訊きたい質問内容を瞬時に投稿できるサービスだ(面白かったので、他の機会でも使ってみたい)。

sugukiku.com

すべての質問に答えるのは時間的に難しいため、ここで寄せられた質問は、後日図書館総合展の公式サイトなどで公開される予定だという。

代表して、野末先生からの質問。
「なぜここまで利用者が増え続けているのでしょうか?」
明確な答えははっきりとはわからないそうだが、メディアで度々取り上げられていることや、SNSでの拡散が利用者を増やしている原因では、と前田氏は言う。市民以外の利用者もとても多いそうだ。リピーターも多い。夜間の利用者も予想以上に多かった。「行ってみたい」「また来たい」と思わせる魅力的な公共施設として、武蔵野プレイスは今後も注目され続けていくだろう。

002.武蔵野プレイス002.武蔵野プレイス

おまけ:協賛社ブースより

ワタクシ野原は、アカデミック・リソース・ガイド株式会社(ARG)ブースの売り子として参加してきました。先行販売の『図書館100連発』、おかげさまで用意した分は完売!

図書館100連発

図書館100連発

佐藤前委員長が総合展グッズを自ら売ってらっしゃったので、ちょいと宣伝のお手伝いなど。f:id:mia-nohara:20170527122226j:plain

ご来場ありがとうございました!