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野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔書評〕脳を操るコツを取り入れるだけで「すぐやる」人になれる! ~菅原洋平『すぐやる!「行動力」を高める“科学的な”方法』

すぐやれる人になるには、自己管理能力を高めて「意思力」を強化しなくちゃいけないのだと思っていた。でも、根性論だけ説いてみてもうまくいかない。本書のすごいところは、自分の脳を操るちょっとしたコツを取り入れれば、自然とすぐやる人になれるという提案をしているところだ。

本書の著者は作業療法士である。専門は、脳に損傷を受けた患者のリハビリテーションだ。リハビリに用いる手法は健常者にも適用できる。ついダラダラとしている人をがらりと変える、“脳科学”から見た8つのコツが紹介されている。内容をつまみ食い的に紹介してみよう。

すぐやる!  「行動力」を高める“科学的な

すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な"方法

0. なにはともあれ睡眠が大事

すぐやる人に、睡眠不足の人はいないらしい。まずは質の良い睡眠をしっかりとることが脳には大切だ。自分がきちんと睡眠を取れているかどうかは、起床から4時間後に頭がすっきりと冴えているかどうかでわかる。早寝にシフトしたいなら、基準になっている夜の行動を見つけることが近道。多くの場合、それは「食事」「入浴(洗顔)」。基準になっている習慣の時間を前倒しすることで、自然と早く床に就けるようになる。私の場合は、「仕事を切り上げて呑みに出掛ける時間」だなぁ。

1. 「ついやっちゃう」を防止するには、使う物の定位置を決める

脳は視覚から得た情報にはさからえない。テレビをだらだら見るのを辞めたくても、うっかり電源を入れてしまったらもはや手遅れ。そんなダラダラした習慣は、リモコンを決まった位置に置くことで改善できるという。無理にテレビを見ることを自分に禁じなくていい。リモコンを定位置に置いておくと、「リモコンを取りに行く」という動作が生まれる。そうすると、ただなんとなく電源を入れるのではなく、「自分は今、テレビを見ようとしているのだな」と気がつく。それだけで変化につながっていくのだそうだ。

2. 「なかなか始められない」を直すには、ちょっとだけ次の動作を脳に見せてからやめる

仕事は区切りのいいところでやめたくなるけれど、そうすると次にとりかかるのがおっくうになる……。それを防ぐには、ちょっとだけ次にやる仕事を脳に見せてから終えること。たとえば議事録をつけるなら、会議の直後に冒頭の部分だけちょっとだけ作っておく。帰宅してから勉強をしたいなら、ノートを開いて日付を書くところまでやってみる。ちょっとだけやってからやめると、脳は「次にこれをするのだな」とスタンバイしてくれるので、だんだんとスムーズに取りかかれるようになる。

3. 仕事が遅い人を見ない。仕事が早い人を観察する

脳は他人の動作をまねる性質があるんだそうだ。残念だけど「すぐやる人」はテキパキと次の行動に移るので目に留まりにくく、のんびりとしている「すぐやらない人」のほうが視界に入りやすい。すぐやらない人を観察して文句や愚痴を言うのは逆効果。知らないうちに自分も、やらない人の動作をマネしてしまうようになる。そうではなく、すぐやる人の動作を観察して、「あの人は忙しい時でもすぐに対応してくれる」と口に出していってみることが大事。言語化されたことは脳に刻まれ、自分の行動にも反映される。

4. 雑談、大切。

脳は「自分自身が発する言葉」に反応する。特に経験から出た言葉を話すと、自分の経験が脳に浸透する。雑談は、経験的な言葉を話したり聞いたりするチャンス。

5. 「やればできるはず」と脳にウソをつかず、「ここまではできた」と小さい成功を褒める

「やればできるんだけど」と思いながら「やらない」という状態は、脳にウソをついていることになってしまう。そうすると、脳は「自分はダメなやつだ」と全否定をしてしまう。そうではなくて、どんなにささいなことでも良いから、「ここまではできた」ということを認めてあげる。

6. 「やる気になる言葉」を言語化して口に出してみる

自分を観察して、やる気になっているときのキーワードを探ってみる。たとえば、「褒められる」「負けられない」「頼られる」など。そのキーワードを口に出しながら紙に書いて、もっともしっくりくるものを探す。しっくりくるものがみつかったら、その言葉に「すぐやる」をつなげてみる。

「『褒められる』からすぐやる」
「『負けられない』からすぐやる」
「『頼られている』からすぐやる」

「自分の体がすぐに動く状態+すぐやる」という文法をつくって、口に出して言ってみる。そうすると、体がすぐ動くように変わっていく。

7. あえて手が汚れる作業をしてみる

触覚は五感のうち、唯一シャットダウンができないものだ。脳は常に、触覚を通して外の世界を感知している。触覚で感じたことを脳はほぼ無条件に信じてしまう。触覚が豊かになると、体は自然と動き出すようになる。けれど現代社会では何かに触れる機会が少ない。だからこそ、あえて手が汚れる作業をやってみる。おむすびを結んでみたり、土仕事をしてみたり、掃除をしたりしてみると、脳にスイッチが入る。爪を整えるのもポイント。爪には「パチニ小体」というセンサーが多く配置されている。

8. 「いつもと同じ」が、脳が疲れないコツ

何も考えずにできることは極力毎日同じルーティンにする。いつも通りにすることが、脳の省エネにつながる。新しい鞄や靴などは、それに適応するためのエネルギーを結構消耗している。

以上、つまみ食い的に本書のポイントを抜き出してみた。なぜそんなことが起きるのかという科学的な仕組みや、「すぐやる」ための簡単なエクササイズは、ぜひとも本書で確認していただきたい。根性だけでやる気をだそうとしていた私にとって、画期的な本だった。脳の「メンタル文法」を変えるために、国語辞典を読むという提案も、とても面白いと思う。

おすすめです。

すぐやる!  「行動力」を高める“科学的な

すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な"方法