醒メテ猶ヲ彷徨フ海

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

初めて舞台に立った。水族館劇場「もうひとつの この丗のような夢 寿町最終未完成版」

7月の頭に水族館劇場の新人劇団員となり、最初の公演は9月のヨコハマトリエンナーレ。まったく演劇未経験のおれができるのは、裏方の手伝いか、ちょい役かと思っていたら、なんと主演の許嫁役だった(そしてそのキャストは、本番3日前に決まった)。

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お稲を演じる増田千珠(左)と、源静香を演じる野原海明(右)。(撮影:干場安曇)

源静香。火山局のお嬢様で、泰一族の御曹司である竜一郎の許嫁。戦場で死んだはずだった竜一郎は復員を果たしたものの、別人格になってしまった。もしかして竜一郎は、まったくの別人にすり替わってしまったのではないか? 疑惑を抱いた静香は名探偵明智小五郎を雇い、その謎を明かそうとしている。

台本に記されているのはここまで。静香がどんな人間であり、どんな人生を生きてきたのかはわからない。それはたぶん、静香を演じるおれ自身の纏う雰囲気や、おれが歩んできた人生と混じり合うことで、はじめて一つの人格となり立ち昇ってくるのだろう。

公演前半では、雇った探偵に迫られても拒絶する、びくびくと怯えている様子を演じていたが(初舞台で実際怯えていたのもある)、それではどうもしっくりこない。静香はどんな人間なのだろうか?

もっと嫌な奴になのかもしれない。たぶん歳は20代後半くらい。男好きで、けっこう遊んできた。もともとお嬢様で何不自由なく暮らしてきたがその欲は底なしに深く、泰一族の財産をも狙っている。竜一郎との婚約は財産目当てではあるが、その容姿にも惹かれている。一方で、他の男に言い寄られれば嬉しく、誘ってみたりからかってみたり。きっと冷たくなった竜一郎に相手にされず淋しいのだろう。

そういえば、「むちむちしたやらしいおねえさん」という役回りは、今の水族館劇場にちょうど空いていたポジションのようにも思う。エロ路線を突き進めばいいのだろうか。


水族館劇場「もうひとつのこの世のような夢」前芝居

顔見世(プロローグ)の後、舞台の上で最初に発する台詞は、「あーら、明智さーん、おはなしになってぇ」。

「全然駄目。明智を圧倒するくらいの勢いでやって」「エロが足りない。恥ずかしがってる場合じゃないぜ」演出家や先輩役者にダメ出しをもらう。その成果か、「静香さまは回を重ねるごとに妖艶になるね」という感想を頂いたときには心の中で思わずガッツポーズをした。でも、わかってる。まだまだ全然、初心者であることは。

「芝居は毒薬」という劇中の台詞がある。本当にそうだと思う。「なんでこんなに辛いことを続けているのかっていつも思うけど、何故だかやめられないんだよね」と先輩役者もこぼしていた。おれも泥沼(?)にすっかり足をとられてしまったのだろうか。 

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