醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕新雪

f:id:mia-nohara:20180122151002j:plain

  • 酔うほどは
  • 買へない酒を
  • すゝるのか
  • 山頭火

早く起きて事務仕事を進めようと思っていたが、寒くてなかなか布団から出られない。そうしているうちにぼた雪が降り出した。ジロウは店を休むのだと言う。午後から歯医者に行くジロウに合わせて家を出る。

いつも履いている靴では雪が浸みてくる。足先がすっかり冷えた。御成のスタバに立ち寄る。びしょ濡れのズボンをバリスタのおねえさんに心配される。靴を脱いで乾かしながら、しばし書き物など。

途上で少しばかり飲んだ、最初は酒、そして焼酎、最後にまた酒! 何といつても酒がうまい、酔心地がよい、焼酎はうまくない、うまくない焼酎を飲むのは経済的だからだ、酔ひたいからだ、同じ貨幣で、酒はうまいけれど焼酎は酔へるからだ、飲むことが味ふことであるのは理想だ、飲むうちに味ふほどに酔うてくるなら申分ないけれど、それは私の現状が許さない、だから、好きでもない焼酎を飲む、眼をつぶつて、息もしないやうにして、ぐつと呻る[#「呻る」はママ]のである、みじめだとは自分でも知つてゐる、此辺の消息は酒飲みの酒好きでないと解らない、酒を飲むのに目的意識があつては嘘だが、目的意識がなくならないから焼酎を飲むのである。……

種田山頭火 行乞記 三八九日記

島森書店へ行ったが、大雪でちょうど早仕舞いをするところだった。ヒグラシへ向かう。ひら乃も提灯がついている! 暖簾をくぐってみると、いつも超絶満員のひら乃が大変暇そうだった。やげん(好物)をいただく。熱燗、樽酒、ハツ、モモネギ、しろ、つくね。こんな雪の日でも、じわじわと賑わい始める。

さっと上着を羽織って大谷ビル2階へ。ヒグラシは今日はかおりさん。いつもと変わらない顔ぶれ。冷酒、常温。ゆで塩豚、タイカレー。

スーパーに買い物に立ち寄る。鱈の白子が安かった。帰り道は新雪だ。足跡をつけつつ、はしゃぎながら帰る。帰宅後、ジロウに白子入りの湯豆腐をつくってもらう。ポン酢も自家製らしい。

しんしんとしている。何の音もしない。