〔日記〕脈絡もない夢
- けさから春立つといふ
- ぺんぺん草
- 山頭火
精神科医に、会社のことだとか、芝居のことだとか、夢には見ないかと訊かれる。
確かに、夢には見る。でもそれは悪夢ではない。
夢の中でおれは当たり前のようにそこの一員で、春の陽射しは暖かい。
けれど目覚めて、そこに戻りたい気持ちが起きるのかといえば、そんなこともない。
とりとめのない夢を文字に起こしていた。
稀に筋がしっかりしている日もあるが、たいていは脈絡もない。
生々しい夢が多くなってきたので、十日目でひとまず止める。
漱石も十夜だし。
パソコンの設定の微調整をしているうちに午後になる。
少し本を読んで、出勤するジロウに合わせて家を出る。
鶴岡八幡宮に行って、パソコンに貼るお守りを買う。
金色で神々しい。
いつもは息が切れる階段を、今日は重い荷物を背負っていながらも軽々と登り切れた。日々の養生が体に表れてきているのだろうか。
本殿脇の丸山稲荷に初めて挨拶する。
鳥居型の絵馬は人気のようだ。
さむい、くもり、冬らしく、そして晴、あたゝかく春らしく。
種田山頭火 其中日記 (二)
けふは新暦では桃の節句だが、私には何のかゝはりもない。
子どものころ、ひなまつりは嫌いだった。
ひな人形が恐ろしかったのだ。
「おひなさまはいらないから、鯉のぼりを買って」と泣いて親を困らせた。
大人になって海のそばに暮らすようになり、初めて蛤の潮汁だとか、手まり寿司だとか、ひなまつりにまつわる美味な海産ものを知る。大人になるというのはよいことだと思う。
やっちゃんの今日のおすすめは、トロだった。隣のお客さんから、厚焼き玉子を一切れごちそうになった。
スーパーで売れ残りの蛤を買い、潮汁をつくっていただいた。