醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕心をできるだけオジサンにして

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ジロウの連休3日目。特に予定もなく、ぷらりと家を出る。
竹扇でお昼。カレー南蛮を太いうどんで、生卵を追加して。ジロウは鍋焼きうどん。
江ノ電に乗って江ノ島水族館へ行くことにする。

江ノ電の一番前の席に座った。
稲村ガ崎駅で若い運転手さんが、立ち上がって伸びをしたりするのを観察する。

えのすいには何度も来ているけれど、じっくり見てしまう。
丸顔の魚に好かれる傾向にあるらしい。
ガラスに顔を近づけてのぞき込んでいるとフグが集まってくる。


暇そうな蛸に挨拶する。
手を振ると、反応してあちらもにょろにょろと動く。
水槽の前を立ち去ろうとすると身を乗り出してきた。

新しくやってきたカワウソの棲まいはテラスのそばにつくられていた。
元気がいい。ひょうきんな顔をしている。
掃除をしに来た飼育員さんにじゃれついている。

今日はショーの時間以外にも、飼育員さんたちが水槽の内側にいた。
お掃除をする人間と海獣たちとが戯れる様子は微笑ましい。
あえて来館者がいる時間帯に掃除をすることにしているのだろうか。

再び江ノ電に乗り込んで鎌倉へ戻る。

独りを慎しみ独りを楽しんだ。
考へる事も書く事も、何もない一日だつた。
あるだけの米を炊いて食べた。

種田山頭火 其中日記 (二)

田楽は満席で入れず。
昼のうどんが消化しきれていないので、東急をひやかしに行く。
新しく買う予定のフライパンを吟味。
最上階の本屋を散策。

これまで懸命に「生産性」だとか「タイムマネジメント」だとかの本を読み続けていた自分をけなげに思う。
「女だから」という理由で軽くあしらわれるのが悔しくて、心をできるだけオジサンに近づけて、戦士のように勇ましくいくつもの会議に乗り込んで行った。
それはそれで楽しかったけれど、おれはギスギスしていたかもしれない。
ゆるゆるしたもの、ふわふわしたものになっていはいけないと、髪を結い上げ、きついアイラインを引き。

ああ、華やかなワンピースとか、もう着てもいいのだな。

ひら乃へ行く。
ヤゲンを頼もうとしてナンコツ(豚)を頼んでしまったが、それはそれで美味しかった。熱燗と樽酒。

ヒグラシへ行く。
呑み屋ではこれまでも、先達の表現者からたくさんの言葉をもらった。酔っ払っているから正確に覚えていられないのが問題だ。その場でメモを取るべきなのかもしれない。ニュアンスだけは忘れないようにしようと、翌朝シャワーを浴びながら半反芻する。

「挫折してからが始まりだ。いろんなことに挑戦して回り道をしたのだから、もう本当にやりたいことだけに全力をかけていいんだ」
今日もらった言葉はそんな感じ。

家に帰って、鉄火巻きで熱燗を呑む。またしても炬燵で寝落ち。