〔日記〕名前の消えたポスター
- 春の野が
- 長い長い汽車を走らせる
- 山頭火
本番の前日に急遽舞台に立つことが決まったという夢を見る。
おだてられると弱い質である。
本当にやる気なの? と焦って止めようとする自分が心の中にいる。
そのくせウキウキとして客演の女の子から、まだ筋も知らない台本をコピーさせてもらっている。
目が覚めた。
おれの名前の消えた美しいポスターをぼんやりと眺める。
雨、春寒なか/\きびしい、袢纒を一枚かさねる。
種田山頭火 其中日記 (二)
終日独坐。
小鳥、殊に眼白が此頃興奮してきたやうだ、椿の木にあつまつて、朝から晩まで、恋の合唱をつゞけてゐる。
茫然として、私はそれにも聞き入るのである。
新しい一日を始める気にならない。風呂に入る気が起きない。
毎朝、湯船に一時間ほど浸かって本を読むのが日課だ。
始発の電車に乗って出張に出掛けるときも、いつもそうしていた。
それが今日は全然駄目なのだ。
パジャマのまま起き出して、紙パックに少しだけ残っていた日本酒を空ける。
鮭トバを囓り、柿ピーを食み、本を読む。
14時半過ぎ、ようやく少し動こうという気持ちになる。
風呂で『女のいない男たち』を読み始める。
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発表されてすぐにジロウが買ってきたが、それっきり開かれないまま本棚に並んでいた。そういえば、ゆっくり新しい小説を読もうなんていう余裕は、これまでずっとなかったかもしれない。
出勤するジロウと一緒に家を出る。御成スタバへ。
新しい仕事の依頼の電話が掛かってくる。
本当におれはやり遂げられるのだろうかと思いながら話を聞いている。
ヒグラシへ。常温二合、マグロの中落ち、鶏のローズマリーソテー。いずれも絶品。
帰宅。カップラーメンの担々麺を食べた後、『アンダーグラウンド』の続きを読む。
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ホームに倒れて泡を吹いている人がいる。
地上では乗客たちが道ばたに倒れてもがき苦しんでいる。
それを目にしながら、自分も体調がおかしくなっているのに、インタビュイーの多くは「まずは会社に行かなくては」と考える。
そう考えてしまうのが恐ろしいと思った。