〔日記〕鬆の無い野菜みたいに
焦って朝から図書館に行こうとしていたけれど、まあそんなに焦ることもないか、と思い直す。
おひつに残っていた冷や飯に味噌汁をかけて食べる。
ずっと昼は外食する習慣になっていた。
家にほとんどいなかったし、たいてい出張していたし。
仕事を辞めてしばらくは外食を続けていたが、毎日「今日はどこへ食べに行こうか」と考えるのが面倒になってきた。まして、鎌倉の昼時はどこへ行っても混んでいる。時間をずらして11時台に食べに行くようにしていたが、それでも行列ができていることがある。なおかつ、観光地なのでどこも割高だ。毎日昼に金を掛けていると罪悪感が出てきた。
長いこと使っていなかった炊飯器を引っ張り出した。
土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』に勇気づけられる。
お味噌汁は、一杯分だけでも簡単に作れる。
市販の顆粒だしなんて使わなくても、鰹節をバサッと入れてしまえばいい(鍋から取り出す必要もない)。
- 作者: 土井善晴
- 出版社/メーカー: グラフィック社
- 発売日: 2016/10/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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昼に毎日家で米を食うようになってから、体の張りが変わってきた。
どんぶり飯を食らっているから肥るかと思えば、そんなことはない。
脂肪は脂肪なのだが、ぱつんと張っている。
鬆(す)の無い野菜みたいに。
そういえば、女の体をそういうふうに書いていた小説があった。
「アンタの体は、鬆が入ってないなあ」
という。
「鬆?」
「うん、大根や牛蒡にスカスカの穴があるのがようあろうが。あれがないなあ。どこもかしこもみっしり、ずっしり、肉が詰まってるのう。綺麗やのう」*1
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炊きたてのご飯にはオージャスが含まれているという。
それのせいなのかもしれない。
わたしが輝くオージャスの秘密: 黄金の生命エネルギーできれいになる元気になる (ちくま文庫)
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それにしても、ちょっと食べ過ぎた気がする。
ほうじ茶を入れてのんびりする。
図書館へ。すごく古い資料が届いていた。
大正時代の本で、偉い先生が寄贈したものであるらしい。活版印刷だ。
今日は、雲がすごく面白い。写真を撮りながら歩く。
帰宅して資料を読み込み、構成を練る。
自宅でずっと根を詰めていても飽きるので、パソコンを持って散歩に出掛ける。
日暮れになって、雲はいっそうすごいことになっていた。
良い構図のポイントを探して歩く。
何度も空を見上げて写真を撮っていると、すれ違う人が不思議そうに首をかしげて一緒に空を眺めていた。
なんか、あれだ、湯葉みたいだ。
島森書店でスケッチブックと青インクを買う。
レジのおねえさんが研修中の若葉マークをつけていた。
表口のスタバへ。
ここでもハミングバードのカードは売り切れとのこと。残念。
新しい小説を書き始める。
十日ぶりに入浴、剃刀がないので髯が剃れなかつたのは残念、それよりも残念なのは電球をかへることが出来ない事だ、今夜もくらがりで考へるか!
種田山頭火 其中日記 (二)
ヒグラシへ。今日は新人のおにいさん。
知り合いによく似ていて、縄のれんをくぐってすぐに「あれ? ここは横浜、寿町?」と思う。
カンパチと常温一合。
ジロウと待ち合わせて、との山へ。
「明日の夜は、寒くなるみたいだから気をつけなさいよ」
と遠藤さんが言う。