醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕すべての生き物が自由でありますように

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  • 春がしける日の
  • なにもかも
  • 雑炊にしてすする
  • 山頭火

猫は好きだが、飼ったことはない。
なんとなく居着いた野良猫と暮らしたことはある。
狭い場所に動物を閉じ込めておくことに抵抗がある。
それは、自分が閉所恐怖症であることも関係しているかもしれない。

窓を開けられる日は、真冬でも全開に開ける。
昔の恋人は、クーラーが無いと生きていけない人だった。
寒い夜には、窓を段ボールでふさいでいた。
恋していたけれど、いつも私は窒息しそうだった気がする。

水槽に魚を飼うのも心苦しい。
今の部屋は、滔々と流れる河口が見下ろせる。
河口には、鯉も、ボラも、フグも、クラゲもいる。
いろんな種類の鷺が降り立つ。
カワセミが矢のように飛ぶ。
海鵜がネッシーのように泳いでいる。
トンビがゆるゆると旋回している。
夏にはツバメが、冬には鴨がやってくる。
ハトも、カラスも、スズメも、セキレイもいて、いつも賑やかだ。

小さな部屋の中で生き物を飼う必要なんてないと思えてくる。
ベランダに立てば、そこが動物園であり、水族館だ。

自由を愛している。
すべての生き物が自由でありますように。

宵から朝まで、ぐつすり寝たので気分爽快、仕事が出来る。
鼠の悪戯には閉口する、よし持久戦だ、糧道を断つてやらう!
心のうちに雨がふる、――私もやつぱりまだセンチメンタリストだ!

種田山頭火 其中日記 (三)

たくさん洗濯をした。
洗濯をするそばからジロウが干してくれるので大変便利である。
玄関のドアも全部開け放って、部屋中に風を通した。
埃の降り積もっていた食器棚を整理した。
気に入っている陶器やガラス器だけを並べていく。

昼飯を食べて、しばし仕事。
今日はどうにか形になった気がする。

とても暖かい。桜が散ってしまう前に、桜道を歩いてこよう。

人力車が入れ替わり立ち替わりにやってくる。
この時期の穴場なのだ。
ちょっとチャラい車夫のあんちゃんが、
「サクラってぇー、いろんな由来があるんすよ、知ってましたぁー?」
と言いながら車を引いていく。
「へー」
「はー」
と、どうでも良さそうな返事をしているのは、ギャルっぽいふたり連れのお客だった。

荏柄天神社まで足を伸ばす。
気に入っていた茶店は更地になっていた。
新しい住宅ばかりが並んでいる。

桜の咲いているうちにまた来られるだろうか。
桜は、散っていくときがいちばん好きだ。


大船に出ようかと思っていたけれど、この桜の気を浴びたまま呑みに行きたい気になる。
ヒグラシへ。
常温、鯛のお刺身、空豆
タケさんの春らしい肴。

ほろ酔いで買い物しながら帰る。
アタゴオルの続きを読みながら寝る。