〔日記〕居酒屋みどり
- 警察署の木の実の
- うれてくる
- 山頭火
明るい雨だ、私の心が明るいから。
種田山頭火 行乞記 室積行乞
行きあたりばつたり! さういふ旅が、といふよりも、さういふ生き方が私にはふさはしい。
陰暦卯月朔日。
「ギャラは少ないですが実績になりますよ」という依頼に悔しさを噛み締める。
「ギャラはたくさん払いますから、あなたに書いて欲しいんです」と言わせてやるんだ。
腹が減って朝食に讃岐うどん。
講演の資料を作って、家を出る。
J. S. STEAK STAND でステーキを食って力をつける。
何度も通ったはずなのに、最寄りの駅名さえ思い出せなかった場所へ行く。
自分の脳内でいろんなことが消去されているらしい。
東京の西の外れ。これで行くのは最後になるんだろう。
ずっと「気に入られる人」になろうとしていた。
騒がず目立たず、愛想笑いを浮かべて。
もうそういうのはやめよう。
嫌なヤツでいい。人でなしでいい。
あけっぴろげに、自分のそのまんまを伝えればいい。
長い道のりを電車で帰る。
ジロウが「居酒屋みどり」と名付けた在来線のグリーン車で、日本酒(真澄)に鶏のからあげ、ポテトフライ、シューマイ。
出張に行くときにはいつも在来線グリーン車を使っていたけれど、それはパソコンを広げて必死に仕事をするためだった。隣でぷしゅっとチューハイを開けて呑んでいるサラリーマンが妬ましくてしかたなかった。
妬ましいのなら、自分も同じようにすればいいだけのこと。
新月。新しい人生に乾杯をするのだ。
鎌倉に戻ってきて、釈迦で一杯だけ呑んで帰る。