醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔書評〕服部みれい『あたらしい自分になる本』古くから伝わる知恵を少しずつ試して見る

f:id:mia-nohara:20180825150334j:plain

「服部みれい」という人のことを初めて知ったのは、鎌倉にある山形そばの店「ふくや」で、店主のふくちゃんが「うちの店のこと書いてくれてるんだよー」と、『あたらしい食のABC』という本を見せてくれたから。

あたらしい食のABC

あたらしい食のABC

「えっ、料理研究家さんなの?」とトンチンカンな答えをしたけれど、そうじゃなかった。

ちょうど同じ頃、辻堂に新しくできたテラスモールの有隣堂で、服部みれいが編集長を務める『マーマーマガジン』の特集コーナーができていた。

この『マーマーマガジン』創刊から3号までのアートディレクターを、やっぱり鎌倉の友人の「ぬくちゃん」ことフルタヨウスケが務めていたことは後から知った。

興味を持って著書をいろいろ手にとって見たけれど、「女子女子した感じ」というか、「オンナオンナした感じ」というか、何かムワッと鼻に来る感じがして、どうも最初は好きになれなかったのだ。

まあ、きっとそれは、私が自分の中のオンナの部分を否定していたからなんだと思う。自分の中で砂を掛けて隠そうとしていたオンナの部分が、ビビビッと反応したんだろう。

だから、ちゃんと読むようになったのは初めて知ってからずいぶん経ってからになった。確か、『自由な自分になる本』をちくま文庫で見かけて「おや?」と思ったのだ(ちくま文庫は全般的にファンなのだ)。

さて、前置きが長くなってしまったけれど、『あたらしい自分になる本』である。

あたらしい自分になる本 増補版: SELF CLEANING BOOK (ちくま文庫)

あたらしい自分になる本 増補版: SELF CLEANING BOOK (ちくま文庫)

この本では、こころやからだの不調を抱えていた著者が実際に試した、10個の知恵が紹介されている。

  1. 冷えとり健康法のこと
  2. アーユルヴェーダ
  3. 白湯のはなし
  4. 食べものと食べかた
  5. 部屋の大浄化作戦
  6. 布ナプキン
  7. 服のはなし
  8. アファメーション
  9. 瞑想のはなし
  10. ホ・オポノポノ

どれも初めて聞いた場合には、うさんくさく感じたり、すっごくめんどうなことに思えるかもしれない。最初読んだときには、「ふーん、そういう方法もあるんだー」と思っただけで、実際にやってみようとは思わなかった。

けれど、どういうわけか人生にガラリと転機が訪れ、しがみついていた仕事も、芝居も、大切だと思っていたものを何もかも手放した後で、「人生の夏休みのような今こそ、やってみよう」と思ったのだ。

と言っても、全部実践しているわけじゃない(素足が好きなので、「冷えとり健康法」とかを試すとしたら、ずっと先のことになると思う)。ちょっとずつちょっとずつ、今の自分に合いそうなものを試してみる。著者もこんなふうに書いていることだし。

あの知恵この知恵を同時に試すのはいいのですが、「分けて理解をする」ということはとても大事なことのようです。自分に合うものを、どうぞ取捨選択して、いつも自分自身が主人公になって、先人からの知恵をたのしんでください。たのしんでいくうちに、人生の主人公になることができる知恵ばかり、ともいえます。自分の中に答えを見出すのもどんどん容易になっていくことでしょう。*1

気持ちよく生きられる方法を探してみる。昔から伝わることを学んでみる。
これまで全力疾走で生きてきて、なかば強制終了的にのんびりモードに入った自分に、ちょうどいいタイミングで新しい生き方を教えてくれる本となった。

あたらしい自分になる本 増補版: SELF CLEANING BOOK (ちくま文庫)

あたらしい自分になる本 増補版: SELF CLEANING BOOK (ちくま文庫)

自由な自分になる本 増補版: SELF CLEANING BOOK 2 (ちくま文庫)

自由な自分になる本 増補版: SELF CLEANING BOOK 2 (ちくま文庫)

うつくしい自分になる本 (単行本)

うつくしい自分になる本 (単行本)

*1:服部みれい「文庫版によせて」『新しい自分になる本』増補版(ちくま文庫)2016. 7、p.10