〔日記〕おれが年商1億円くらいサクッと稼いでやんよ
- なんとすずしい
- 松かげに誰もゐない
- 山頭火
晴、八朔、二百十日の厄日である、関東大震災十週年、何といふおだやかさ。
種田山頭火 行乞記 大田から下関
文月廿二日、曇りときどき雨。
「毎月オクサンに渡す生活費、10万円でいいよね」
とジロウが言う。
「……それはもちろん、家賃の10万円とは別に、っていうことだよね?」
「えっ! ちがう……」
そうか、おれが自分の稼ぎから家賃やら光熱費やら税金やらを払い続けてきたから、今の家計が月にどのくらいかかっているのか、ジロウには実感がなかったのだな。
「今の定期収入の額だけで生活できると思ってたの? 私は当然、貯金で食いつなぐんだと思ってたけど」
「いやだ、そうしたら減っちゃうもん」
ショックを受けたジロウは、ソファーに沈んでしばらく固まっていた。
おれは呆れて全然眠れなくなり、布団でごろごろとした後、東の空が明るくなってきたので起きることにする。
風呂に入って坐禅をし、散歩に出掛ける。
9月になった途端、すっかり秋の海だ。
海の家も閉じ、海水浴客もいなくなり、波打ち際はサーファーばかりで混み合っている。
カツオノエボシをいくつかみつけた。
500円玉サイズだったけれど、5個体くらい。
海藻に巻き付いたまま、打ち上げられたみたいだ。
光明寺の本堂に入り、阿弥陀如来に蝋燭を納める。
誰もいないだだっ広い本堂の畳に正座して、阿弥陀さまに挨拶をする。
雨が降り出した。
道場の最中らしく、声明が雨音に混じって遠くから聞こえる。
雨粒が蓮の葉にあたってはじける。
風も強いし、雷も鳴り出したので浜には出ず、町中を通って帰ることにする。
ブログの見出しデザインをいじってみる。
日記を書いて、
合わせて作られた新しいカードのデザインを人目見て、即決する。
— 野原 海明 (@mianohara) September 1, 2018
青、金。海、鱗。透明、キラキラ。
〔日記〕2018年秋のスターバックスアニーバーサリーブレンドは、サイレン(人魚)のデザインだ - 醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明(@mianohara) https://t.co/01G6cFBGao
小説を書く。
「大丈夫ですか。救急車、呼びます?」
— 野原 海明 (@mianohara) September 1, 2018
カウンターに肘をついて、なんとか立っていたつもりだったけれど、気がつけば外の通路に寝かされていた。目の前に、瓶ビールの黄色いケースが転がっていた。
白濁(二十六) - 醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明(@mianohara) https://t.co/TSxLupcnBo
ノートの切り替え作業をして、さらにブログを更新する。
散っても散っても尽きずに咲き続ける紅い花。作者の杉浦日向子は、この花に北斎の画才を連想した。
— 野原 海明 (@mianohara) September 1, 2018
〔おすすめ本〕葛飾北斎に娘の応為、渓斎英泉が愛しくてたまらなくなる傑作 ~ 杉浦日向子『百日紅』 - 醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明(@mianohara) https://t.co/cajQ2XTu3V
昼に納豆かけご飯。
暗い顔で起きて来たジロウが目玉焼きをつくってくれた。
アメブロも更新する。
すごく苦手なことがある。
— 野原 海明 (@mianohara) September 1, 2018
それは、スケジュールを入れることと、電話やメールに即レスすることだ。
スケジュールもメールの通知も必要なくなった | 野原海明の裏オフィシャルブログ「夜明けの航海日誌」 https://t.co/ESQvS7O1LK
ジロウはまだ不機嫌な顔をしている。
「あなたは小説だけ書いていればいいから」と言ったのは嘘だったのか。それとも、口で言ってみただけでおれを養うつもりなんてさらさら無いのか。
頭に来て、決める。
おれは、ジロウの両親が生涯をかけて貯めた貯蓄額を、さくっと一年で稼いで超えてみせる。
「おれが年商1億円くらいサクッと稼いでやんよ。ン千万円やそこらの端金でグダグダ言ってんじゃねえよ(小声)」
目が覚めたらしい。
一緒に家を出る。
ジロウは憑きものが落ちたような顔をして、
「お袋もおんなじようなこと言ってた」と言った。
大船のUNIQLOでジロウの買い物に付き合い、解散。
ぱぁーっと秋物の服でも買ってやろうと思っていたけれど、特に欲しいものがなく、鎌倉へ戻る。
眠い。大変眠い。
ふらふらと焼き鶏を買う。
ヤゲン軟骨3本、鶏皮を塩で1本、手羽中串を1本。
日本酒を買って帰る。
枝豆を解凍、しらす冷や奴。
「織田裕二が見たい」という動機だけで『アンダルシア 女神の報復』を観る。
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色仕掛けしやがって、ええい、黒木メイサ許さん、と、勝手に腹を立てる。