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ヘタウマ禅画の主峰!「仙厓礼讃」展を見に出光美術館へ行って来た[東京都千代田区]

 
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ほとんど落書きみたいな、下手くそな漫画みたいな禅画は、一度見たらやみつきになる。たまたま古本屋で画集を手に取ってから、すっかりとりこになった仙厓の書画を観に、丸の内にある出光美術館へ行って来た。



88歳まで生きた長寿の禅僧 ― 仙厓義梵

仙厓義梵(せんがい ぎぼん)は江戸時代の禅僧だ。美濃国(現在の岐阜県)に生まれ、11歳で臨済宗の僧となった。「人生五十年」と言われていた時代に、なんと88歳まで生きた長寿の人である。

40歳で博多聖福寺(しょうふくじ)の住持職に就任し、62歳でその職を退いて隠居生活を始める。ほとんどの作品は隠居後の25年間に描かれたもので、その数は2,000点とも3,000点とも言われている。


出光興産創業者による膨大な仙厓コレクション

出光美術館は、ガソリンでおなじみの出光興産の創業者出光佐三(いでみつ さぞう)のコレクションを収蔵している美術館である。今回の「仙厓礼賛」展では、展示のすべて(95点)が自館の所蔵作品であるというから驚きだ。出光佐三は、よっぽど仙厓に惚れていたに違いない。

出光佐三は、百田尚樹によるベストセラー海賊とよばれた男』の主人公のモデルとなった人物である。その芸術に掛ける想いは熱い。

出光興産は、東京12チャンネル(現在のテレビ東京)の番組『題名のない音楽会』のスポンサーである(しかも一社提供)。普通、30分番組の場合は、番組の中盤に一度コマーシャルが入る。しかし、出光佐三の「芸術に中断は無い」という考えに基づいて、『題名のない音楽会』では、番組の最初と最後しかCMが入らないのだ。

出光佐三のコレクションには、ジョルジョ・ルオーやサム・フランシスの絵画もあるが、これら美術作品収集のきっかけとなったのは、仙厓の書画との出逢いだった。それもまだ19歳の頃のことである。郷里の福岡で、たまたま訪れた古美術品売り立て会場に、仙厓の「指月布袋画賛」(しげつほていがさん)があった。父親に頼んでこれを購入したのが、膨大なコレクションの始まりとなった。

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 出典:出光美術館

佐三は、その後も数千点に及ぶ仙厓作品を集めた。19歳から亡くなる95歳まで、70年以上に渡り収集を続けたのだ。没年、最後に入手した作品は、やはり仙厓の書画で「双鶴画賛」だった。

もちろん、この「指月布袋画賛」と「双鶴画賛」の両方を、今回の「仙厓礼賛」展で見ることができる。

見どころは下絵と完成画を比較して見られる「書画巻」

「仙厓礼賛」展は、草稿としてスケッチされた「書画巻」と、これをもとに描かれた完成作を比較して見られるのが魅力である。下絵もユーモア満点で、ついついくすりと笑ってしまう。

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 出典:出光美術館

訪れたのは9月18日(水)。平日だった為か、年配の男性客お一人様が多かった。来館者はそこそこ多いのに、シーンと静まりかえった展示室で、笑いをこらえるのに苦労する。こっそり皮肉を言ってる絵に笑ってみたり、キュートな瞳をした「トド画賛」に可愛い! とか言ったりしたいので、ちょっとつらい。でも、日によってきっと雰囲気は違うのだろうな。

代表作をユーモア満点にグッズにしたミュージアムショップ!

ミュージアムショップがまた素晴らしかった。この可愛らしいクリアファイルをご覧いただきたい。「きゃんきゃん」である。

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仙厓の落款をかたどったクッキー型なんかもあった。落款を量産……? さらに、ユーモアが効いていて良いと思ったのは、「一円相画賛」をパッケージにしたお茶セット。

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○を描いただけの一円相は、禅の悟りの象徴だ。完全円満なる丸。そんな大切なものの横に、仙厓は「これくふて 茶のめ」と書き添える。悟りでさえ、こだわりをもたずにぺろりと食べちゃいなさい。そんな声が聞こえてきそうだ。そして、それをそのままお茶セットにしてしまうというこの粋。ちょっと良いお値段ではあるけれど、誰かのお土産にしたくなる。

そして図録も、解説たっぷりで嬉しい。

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 出典:出光美術館

そういえば鎌倉にも仙厓みたいな人がいたぞ

仙厓の生涯を小説にした『死にとうない』という本を教えてくれたのは、鎌倉は由比ガ浜にあるカレー屋「極楽カリー」の竹迫さんだった。

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竹迫さん画のパロディ。布袋さまの指さすのは、月ではなくて極楽カリーの店舗だ。

死にとうない (新人物文庫)

死にとうない (新人物文庫)

死を前にして、禅僧のくせに「死にとうない」と言ったという仙厓。その真意はどこにあったのだろう。まだ小説は未読だけれど、仙厓の書画を実際に目にした今こそ、ちゃんと読んでみたいと思う。

私が仙厓を知ったのは、古本屋で売っていたこの画集がきっかけだった。

かわいい禅画: 白隠と仙厓

かわいい禅画: 白隠と仙厓

『かわいい禅画』は、ミュージアムショップにも売っていた。図録よりも判型が小さくて、気軽に手元に置いておける感じだ。

「仙厓礼賛」展

開催期間:2018年9月15日(土)~10月28日(日)
休館:月曜日(ただし、9月17日、9月24日、10月8日は開館)
開館時間:午前10時~午後5時(金曜日は午後7時まで
開催場所:出光美術館(東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階)
 JR「有楽町」駅より徒歩5分
 地下鉄「日比谷」駅より徒歩3分
入館料:一般1,000円/高・大学生700円/中学生以下無料