醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕紺色の服たちがレベルアップして戻ってくる

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  • 旅は気軽い
  • 朝から
  • 唄つてゐる
  • 山頭火

秋は収穫のシーズンか、大きな腹をかゝへた女が多い、ある古道具屋に、『御不用品何でも買ひます、但し人間のこかしは買ひません』と書いてあつた、こかしとは此地方で、怠けものを意味する方言ださうな、私なぞは買はれない一人だ。

種田山頭火 行乞記 (一)


葉月廿六日、霧雨、肌寒い。

「限りある豊かさ」に囚われてはいけない。今ある豊かさを土台にして、前に進むのだ。自らの力で豊かさをふくらましていくのだ。


2時頃、泥酔したジロウが帰ってきて起こされる。そのまま眠れず、4時になったので起きてしまうことにする。睡眠時間は2時間くらいだったが、ぐっと深く眠った感じがしたから、これで問題ないのだろう。

数々の打合せや、舞台の建て込み作業で着ていた紺色のシャツをまとめて処分する。紺の薄手のマリンコートと、気に入っていたけれどすっかり日に焼けてしまった紺のブレザーも。半透明の袋に詰め込んだ紺色の塊に別れを告げる。

「毎日服を選ぶ余裕なんてない」と思っていて、同じ服を何着も持っていた。スティーブ・ジョブズとか、マーク・ザッカーバーグとかを真似て。ああ、でもそれは、女の生き方としては大変辛いものだったかもしれない。

毎日服を選ぶ贅沢を楽しんでいい。スカートだってハイヒールだって選んでいいのだ。


ひさしぶりに坐禅をしてから、散歩に出かける。材木座ではカラスが、砂浜にうち捨てられたウィダーインゼリーの袋をくわえて、うれしそうに飛び跳ねていた。そうかと思えば、波打ち際で死んだ鳩の屍肉をむさぼっている。豊かな食生活だ……。

光明寺は山門と総門周辺に立ち入り禁止の黄色いテープが巻かれ、足場がくまれていた。先日の台風でどこか傷んでしまったのだろうか。お十夜まであまり日がないのでちょっと心配になる。

日記を書いて、


小説を書く。


霧雨のなか、いそいそと大船へ出かける。ルミネをさーっと歩いて、無印良品でこれはという薄手のコートをみつける。やっぱり紺だ。今朝方処分した紺色の服たちが、レベルアップして一着にまとまって現れたみたいだと思った。レジでタグを外してもらって、そのまま着て鎌倉へ戻る。


御成スタバへ。けっこう空いているのに、なぜかこちらと同じようにパソコンを広げる女性と合い向かい合いになってしまう。鼻を突き合わせて会議しているみたいで落ち着かない。こちらから席をずれるのもあからさまな気がして、しばし耐える。観光客の少ない日のスタバはシェアオフィスみたいだ。顔ぶれもあまり変わらないし。

『私はやる』を読み進めて、『引き寄せ実験集』を読み始める。

私はやる: 自分の中のありあまる富を発見する方法

私はやる: 自分の中のありあまる富を発見する方法

ヒグラシへ。早い時間なのにいつものメンバーでだいたい埋まっている。久しぶりに常温二合、マグロ中落ち、芋煮、マグロのカレー。

「夜中なのに島森書店が開いているーめずらしー」とほろ酔いで思ったが、まだ18時だった。ノートを買い、スーパーで麦茶とベーコンを買い帰宅。21時前には寝てしまう。