新井英一ライブイン鎌倉Ⅶ「はるはうららか、命の音風」を聴きに行く

新井英一ライブイン鎌倉Ⅶ「はるはうららか、命の音風」を聴きに、鎌倉女子大学二階堂学舎松本尚記念ホールへ行く。雨の予報だったけれど、ライブ直前には青空が広がった。窓を埋め尽くす山の緑がいっそう美しく映える。

開演直前。大入満員だ。

新井英一さんは朝鮮半島の血を引く「コリアンジャパニーズ」。21歳のとき単身で渡米し、放浪生活の中、独学で歌を作り始める。帰国後、内田裕也に見出されて1979年にデビュー。亡き父の故郷である韓国・清河（チョンハー）を訪ねる旅を歌った「清河への道」は、TBS-TV「筑紫哲也ニュース23」のエンディングテーマ曲に選ばれている。アルバム『清河への道～48番』は、第37回日本レコード大賞「アルバム大賞」を受賞した。

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清河(チョンハー)への道

鎌倉でのライブは、立ち飲み古本屋「ヒグラシ文庫」の酔客らを中心とする実行委員会が企画している。

ヒグラシ文庫に新井英一さんの歌を持ち込んだのは、ドン・ガバチョこと植松憲一さんだったと記憶している。アルバム『オールドファッション・ラヴソング』は、当時のヒグラシ文庫の雰囲気によく似合った。新井さんのハスキーで力強い歌声は、酒の或る場所にしんみりと浸みる。

全集1(5)オールドファッション・ラヴソング

新井英一ライブイン鎌倉Ⅶ「はるはうららか、命の音風」のセットリストは、下記の通り。

1. サララ
2. それぞれの人生
3. いのちのひびき
4. ぶらじる丸最終航路
5. 胸の振り子
6. 死んだ男の残したもの
7. 祈り
8. 涙ひとつぶ
9. ものがたり
10. 清河への道
アンコール. 夢心地

「ぶらじる丸最終航路」は、神戸から船に乗り込み、アメリカを目指した21歳の旅を歌ったもの。昼も夜も働き、どうにか金をつくって切符を買う。あてがわれたのは船底の小さなベッド。幾つもの夜を重ねて自由の国を目指した。同じ船に乗り合わせた仲間と、「また会おう」と叶うはずもない約束をする。誰の人生にも物語があるが、シンガーソングライターはそれを歌にできる。

全集1(4)アルカンタラの月

「祈り」は、山尾三省の詩に、李政美（い・ぢょんみ）が曲をつけたもの。薬師如来を讃える歌だ。新井さんは奈良の薬師寺で、ご本尊の薬師如来に向けてこの歌を奉納されたそうだ。「ヒットはしていないけれど素晴らしい歌がある。そんな歌い継ぐのも自分の役目だ」とおっしゃっていたのが印象的だった。

祈り

「ものがたり」は、樹木希林が出演したドラマ「女捜査官」のエンディングテーマとして自ら希望した歌。「あらためて歌うと、樹木希林さんと内田裕也さん、二人そのものの歌だった気づいた」と新井さんは話されていた。

演じるままに役者になればいい
縁があるならば一緒になれるだろう
縁がないならば思い出に変わる

縁がなくても思い出にはなるというところに、新井さんの優しさを感じる。

全集1(2)眠る人

たっぷり一時間半、堪能いたしました。今回のライブは、生きることの喜びを歌った歌が多かったような気がする。春の陽射しを受ける草木のような、晴れやかなみずみずしさを感じた。

ライブが終わった暮れ時に、予報通りに雨になった。ライブが終わるまで待っていたかのように。

オールドロマンティックラブソング

新井英一ライブイン鎌倉Ⅶ「はるはうららか、命の音風」
2019年3月30日（土）14時半開演（開場13時半）
鎌倉女子大学二階堂学舎松本尚記念ホール
（神奈川県鎌倉市二階堂890-1）
出演：新井英一、高橋望（ギター）、大森聖子（ピアノ）
チケット：前売り3800円、当日3980円

ARAI EIICHI Live in Kamakura VII実行委員会
実行委員長：　前田清子
実行委員：　秋田正三、新城順子、新城信二、井上篤子、植松憲一、佐藤ヨシ子、中原蒼二、早水瑞枝、干場安曇、本間克子、山本廣志
協力：　遠藤義廣、茸地寒、前田更子、平山紀子、しょうび
チケット販売協力店：　島森書店、松林堂書店、新荘園、たらば書房、腸詰屋鎌倉西口、トムズ
事務局：　神奈川県鎌倉市小町2-11-1 大谷ビル2F ヒグラシ文庫内
写真：　有高唯之
デザイン：　在原祥夫

おつかれさまでした！