醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕尾道には、子供の頃から憧れていた

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暗いうちに朝がへり、そして朝酒。
公明正大であつた(かへりみて恥づかしくないこともないけれど、許して頂戴!)。

種田山頭火 其中日記 (八)

弥生二日、晴れ。

今日はモーニングページが書けなかった(いつも日記の冒頭には、その日のモーニングページで書いたものの一部を載せています。モーニングページについては、ジュリア・キャメロンの著書に詳しいです)。

今からでも間に合う大人のための才能開花術 (ヴィレッジブックス)

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6時18分に起きる。宮浜温泉「旅館かんざき」の温泉に入る。ここの温泉はラドンを多く含む単純弱放射能温泉で、通称「美人の湯」。通風にも良いらしい。

8時、旅館の朝食をいただく。甘すぎないだし巻き卵が美味だった。料理人は飲んべえに違いない。

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9時、再び車で送ってもらって、在来線で大野浦駅から尾道を目指す。途中三原駅で乗り換え。わりと満席。結婚式に向かうらしい、ほんのりヤンキーなあんちゃんたちが陽気に揺られている。

11時27分、尾道着。ロッカーに荷物を預けて散策へ出掛ける。駅から千光寺山ロープウェイ乗り場を目指して尾道本通りをぷらぷら歩く。アーケード街の路地横で、おっちゃんが昼から生ビールを呑んでいるのをすかさずチェックする(後の楽しみにとっておく)。

腹が減るとジロウの機嫌が悪くなるので、対策をとって先に昼飯とする。やっぱりここは、尾道ラーメン? 行列ができている店は避けて、にぎわってはいるが回転の早そうな月天心 (ツキテンシン)に入る。尾道ラーメン。ジロウはすじラーメン。あっさりとした魚の出汁で、小腹にはちょうどよかった。ちょっと甘めなのがあまり好みではないかもしれない。

ロープウェイ乗り場に到着。混んでいる。ものすごく混んでいる。

行列に並ぶのが嫌いな我々は、徒歩で山頂を目指すこととする。とりあえず、ロープウェイ乗り場裏手側にあった艮神社にお参り。頭上をロープウェイが通り過ぎていく。小さい箱。なるほど、これでは行列にもなるはずだ。

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艮神社の手水は、亀から猫の首が出たようなひとから水が湧いていた。

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猫の細道を、猫になった気持ちで駆け昇る。千光寺公園の桜はちょうど満開だった。

尾道市立美術館の「リサ・ラーソン展」に立ち寄る。入館しようとする猫との攻防で有名な監視員さんはいらっしゃったが、猫たちは今日は留守だった。

リサ・ラーソン展のポスターに使われている猫は「ミア」というらしい。「そういえばオクサンに似ている」とジロウ(ダンナ)が言う。

千光寺へお参り。ここも空海ゆかりの寺。呼ばれているようでゾクゾクとする。トイレの神様、烏枢沙摩明王のお札をいただいた。

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千光寺さんには、なんとアプリもある。時代を感じる。

 参考:ご祈祷お守りアプリの紹介 | 広島県尾道市,千光寺は歴史ある玉の岩伝説の伝わる古寺

山を下って古寺めぐりコースの石畳を歩く。御袖天満宮と大山寺にご挨拶。商店街側に渡って裏道を散策。人の少ない通りでようやく猫に会える。尾道の猫は、向こうから「にゃ」と挨拶してくれる。

一杯呑もうと思ったが、行きに見かけたオッサンがビールを飲んでいたお店が見つからない。萩原朔太郎の猫町のような幻だったのだろうか?

結局、お惣菜屋さんで「でべら」の素揚げと穴子の蒲焼きを買う。「でべら」は、タマガンゾウビラメを干したもの。味も小さいヒラメ。フグのヒレ酒みたいに、熱燗に入れても美味しいらしい。

ビールスタンドブライアーズでぐいっと一杯ひっかける。


尾道には、子供の頃から憧れていた。いつか青春18きっぷで尾道を目指すのだと決めていた(結局、初めて訪れたのは三十を過ぎてからで、しかも新幹線だったけれど)。一度も行ったことはなかったのに何故だろう、坂の小道や、高台から海を見下ろす眺めが懐かしいのだ。大学時代に読んだ林芙美子の「風琴と魚の町」が、さらに憧れを強くさせた。

「ここはええところじゃ、駅へ降りた時から、気持ちが、ほんまによかった。ここは何ちうてな?」
「尾道よ、云うてみい」
「おのみち、か?」
「海も山も近い、ええところじゃ」

林芙美子 風琴と魚の町

猫がのほほんとして歩き回っている町は、のんびりして暖かく、住みやすい処だ。見晴らしもいいし、散歩にも飽きないだろう。でも、想像の中の尾道はもっと坂ばかりの町で、海は実際よりも開けていた。

ここに棲んでいる自分を思い描く。坂の途中の古民家を安く借りる。近所の飲み屋に繰り出す。もしくは、惣菜屋で世間話をしながら、アテになりそうなものをいくつか買う。海を見ている。ずっと、海を見ている。


デパ地下で地酒と魚占の尾道天ぷらを仕入れ、福山まで在来線で移動。

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予定より一本早い「のぞみ」の自由席に座れたので、そのまま新横浜まで帰る。居酒屋「新幹線」で地酒を堪能する。

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(撮影:大町ジロウ)

ジロウは広島の珍味「せんじがら」が気に入ったみたいだ。豚のホルモンを揚げたこの珍味は、コンビニで売っていた。すごく歯ごたえがあって、口の中にいれると「え?」っと思うけれど、噛み締めると確かに美味しい。

22時頃、鎌倉に帰り着く。さすがに呑みに行くほどの体力は残っていない。Apple Watchは、今日上った階数が「45階分」であることを告げる。スーパーで買い物して帰り、0時40分に寝る。