醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕およそ20年ぶりに大声を上げて怒った

f:id:mia-nohara:20190420163155j:plain

昨日も今日も一句も出来なかつた、出来さうとも思はなかつた、長らく悩んだ結果として、私の句境は打開されつゝあるのである。

種田山頭火 其中日記 (八)



弥生穀雨、晴れ。

面倒くさいオジサンにもニコニコ応対するようにしていたけれど、そういうのはもうやめよう。

7時36分に起きる。One Netbook One Mix2Sで経理をしてみる。画面が小さいから、眼鏡を掛けなくても顔を近づけてよく見えるのがありがたい。

風呂で『目覚めへのパスポート』を読む。入浴時間は1時間40分8秒だった。

日記を書きかけたところで、今日は休みにするらしいジロウと家を出る。フォーラスカルに行こうと思ってたけれど行列ができていたのであきらめて、HANG-GUへ。ミミちゃんのお店の、悪い猫のTシャツ(目つきが悪い煙草をふかす黒猫)を褒められる。石焼きビビンパとミニ参鶏湯。ジロウは参鶏湯のセット。

倭物やカヤへ。鎌倉店は移転? 改装? のために在庫処分セールなのだ。ジロウは派手な地下足袋をチェックしていたが、これというものがなかったらしい(サイズがやたらと大きいのしか残っていなかった)。足袋風の靴下を買っていた。

ぷらぷら散歩。本覚寺にお参りして珈琲 井川でAブレンドとチーズケーキ。女優井川邦子さんがオーナーだったお店なんだそうな。

隣の席のご婦人の会話が耳に入ってくる。

「結婚したばっかりの頃、姑に色留袖を買わされたんです。それが、私にどうしたって似合わない黄色なんですよ。留袖って、高いでしょう? そう何着も買えるものじゃないから、好きな色にしたかったのに。私、本当は緑が好きなんです。でも姑は、黄色が好きだったんでしょうね。それが変な黄色なんですよ。遺品でもらった姑の留袖も黄色で。……でも、○○ちゃんは色白だから、私と違ってきっと似合うと思って! だからね、その留袖、○○ちゃんに譲ろうと思っているんですの」

結局はその○○ちゃんの意向も聞かずに着物を押しつけようとしている。あなたも姑さんと同じことをするのだね、と思いながら聞いている。

膝の上でSurface Laptopを広げて日記を書き上げる。こういう喫茶手のテーブルにどーん! とパソコンを広げるのはなんか雰囲気が良くないと思って。今日はOne Mix2Sを持って歩けばよかったかなぁ。

井川を出て、小町大路から琴弾橋を渡る。思いがけず、鎌倉路地フェスタで出店している井上智陽イラスト工房に辿りついた。本を一冊買って散歩再開。

八幡さまの近くで、これからヒグラシ文庫の周年祝いに向かうという友人にばったり会う。「また後でね!」と手を振って別れる。八幡さまは、明日の流鏑馬の準備をしていた。池でしゃがむと、亀が寄ってくる。真似して他のカップルも、亀を呼び寄せて遊んでいた。

田楽に行くも満席で入れず。あさ月へ。日本酒、地アジ、地蛸の刺身。ヒグラシ文庫へ。今日は聖子さんとえっちゃん。何のお祝いも持ってこなかったから、二人にお酒を勧めて乾杯をする。菊水冷酒、トロタク。

釈迦へ。一ノ蔵。ジロウは、若者がこちらに背を向けて呑んでいることにぶつくさ文句を言っている。
「そりゃあ連れがいるんだから、連れと話してたら自然にこっちに背中向けるでしょう」と言っても「じゃまくさい、ほんとわかってない」とぐだぐだと言う。そのうち若者は恐縮してしまい、トイレの前から戻ってこなくなってしまった。

早めに店を出る。
「あんなことしちゃ可哀想でしょう」と言うと、「なんでオクサンの正義感で俺が怒られなくちゃいけないの」とふてくされている。

道端で、およそ20年ぶりに大声を上げて怒った。
「なんで文句をいちいち私に向かっていうの! 本人に直接言えばいいじゃない! 私は両側に気をつかって本当に嫌な気分だ!」

久しぶりに大声を上げてわかったこと。怒って怒鳴ると、私はすごく芝居がかる。そうだ、あの甲高い声は、ヨコハマトリエンナーレ2017で水族館劇場の団員として演じた「源静香」のキャラだ。見事に舞台上のセリフみたいだった。

関連記事>>>野外アングラ劇団「水族館劇場」の新人団員になりました

ということは、おれは芝居で、いつもは封印していた「怒る自分」を演じていたのか。しかも怒ってもわりとお嬢様なのか。ちょっとびっくりした。中の人は、もっとドスの利いたオッサンなのだと思ってたから。そうかぁ、わりとお嬢さんかぁ。

ちなみに、20年前に怒った相手は、当時一緒に住んでいた友人だった。何で怒ったのかは覚えていない。彼女には「ケンカをしないと本当の友達にはなれない」と言われていた。勇気を出して本気で怒りをぶつけられた最初の相手だったのだ。「なにを!」と言い返された気がするけれど、それ以上はケンカにならず、友情も深まりはしなかった。ああでも、友情が深まり過ぎると恋情にいってしまいそうになるのは性別問わずそうだから、あそこで止まって良かったのだろう。

東急の前で「オクサンは買い物をしてから帰る」と宣言して、ジロウと解散。家に着くと、ジロウはいなかった。いじけて呑みに行ってしまったのかと思ったら、大量の買い物袋を下げてすぐに帰ってきた。『目覚めへのパスポート』を読む。

21時15分に寝る。深夜、お腹を下す。