醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕こんなに面白いのに、なんてもったいない

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  • 水音をさぐる
  • 山頭火

一人一室一燈はうれしい、一杯ひつかけて、ぐつすりと寝た。

種田山頭火 旅日記



卯月七日、晴れ。

「高校では環境問題について学んで来ましたが、自分が研究者になるのではなく、研究者の専門的な言葉をわかりやすく噛み砕いて、物語にして伝えたいんです」

大阪芸術大学のオープンキャンパスに行ったとき、文芸科の教授にそう志望動機を語ったら、「ぷっ」と吹き出された。

「あなたね、文学とは、そういうものではないのですよ」

それから、小説とは何かについて、悩み続けていた。純文学を書かなきゃ小説家として認められないのだろうか……と思っていた。寓話でもエンタメでもラノベでもない、これまでにない小説を! なんて意気込んでみたりして。エンタメなんて書いたら負けだど、変なプライドで思っていた。

いや、でも、いいんじゃないだろうか、もう何万回も書き尽くされてきたようなエンタメを書いたって。私は純文学作家になりたいという変なプライドを捨てて、ひたすらストーリーテラーに身をてせばいいんじゃないか。

7時31分に起きる。風呂で『パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ』を読もうかどうしようか悩む。

パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ

パリのマダムに生涯恋愛現役の秘訣を学ぶ

  • 作者: 岩本麻奈
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2015/01/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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今日は午前中からアフリカンダンスのクラスだ。サクッと風呂を出て支度をして、江ノ電に乗って江ノ島駅へ。片瀬公民館でレッスン。今日のリズムは「ヤママ」。エビみたいに後ろに3回飛んで下がるのが気持ちいい。

散々運動したのに、さらに龍口寺の長い階段を昇って仏舎利塔へ。お釈迦様へご挨拶。導くように、カラスがすぐそばの手すりに舞い降りて、小首をかしげてからまた飛び立った。ぐるりと塔の裏側にまわると、遠くの山々が霞の中に浮かんでいて、生きながら極楽にいるようだった。素敵な風景を見せてくれたことをお釈迦様にお礼する。

五重塔を眺めて下山。洲鼻通りのらーめん晴れる屋で遅めのお昼。ハードなとんこつっぽいらーめんをいただく。ニンニク多めだけれど、さらに増し増しにして。

江ノ島へ。たぶんこれ以上階段を昇るとへたると判断して、初めて渡し船に乗って岩屋を目指す。よく晴れていて、潮風が気持ちいい。隣の外国人のカップルは、「アリガトウゴザイマス」の発音を練習しているようだ。

ちょうど引き潮。岩場に取り残された、小さな海をのぞき込みながら散策する。

今日は岩屋は無料で入れるらしい。洞窟の脇にたくさん石仏が並んでいるのだけれど、足を止める人は少ない。こんなに面白いのに、なんてもったいない。

江島神社発祥の地で、弁天様にご挨拶をする。洞窟を出て、三女神のお社を、裏打ちみたいにいちばん上のお姉さんから順にご挨拶。奥津宮の多紀理比賣命(たぎりひめのみこと)さま、中津宮の市寸島比賣命(いちきしまひめのみこと)さま、辺津宮の田寸津比賣命(たぎつひめのみこと)さま。

江の島大師にも初めて立ち寄った。赤不動様にご挨拶。さらに八角堂の奉安殿で、妙音弁財天さまにもご挨拶。八臂弁財天さまは、今、トーハク(東京国立博物館)にお出かけ中なんだそうだ。

もう足がガックガクである。へろへろと鎌倉にもどり、とのやまへ。越の誉、蛸刺身、ツクネ、トリ、ハツ。ジロウと途中解散してヒグラシ文庫へ。わいわい話をして、よろよろと帰る。途中、スーパーで谷中生姜を買う。22時37分に寝る。