醒メテ猶ヲ彷徨フ海|野原海明のWeb文芸誌

野原海明(のはら みあ)のWeb文芸誌

〔日記〕どっぷり熊楠

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  • そゝくさ別れて
  • 山の青葉へ
  • 橋を渡る
  • 山頭火

雨、いかにも梅雨らしい雨である、私の心にも雨がふる、私の身心は梅雨季の憂欝に悩んでゐる。

種田山頭火 行乞記 (三)

皐月卅日、雨のち曇り。

さあ、しばらくはどっぷり熊楠だ。

6時42分に起きる。「ホテル花てまり」の温泉へ。白浜温泉は、有馬温泉、道後温泉と並ぶ「日本三古湯」なんだそうな。ホテルの源泉は二ヶ所からひいてきている。一つは海側から湧く「衝幹(つくもと)の湯」。もう一つは、山側から湧く「藤の湯」。海の温泉で浄化して、山の温泉で充電する。理にかなっている。

開放的過ぎる露天風呂も。

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海水浴客が水着のまま入れるように、という配慮らしい。ちなみに、こちらの露天風呂は温泉ではないそうだ。

晴れていたら海岸線をぶらぶら歩いて行こうと思っていたのだけど、雨なので断念。バスを待つ。

バス停の前が絶景だった(傘をさしたまま自撮りしたら、背景が入らなかったけど……)。

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雨にけぶる円月島。

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近くで見ると、こんな感じ。

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この丸く空いた穴の中に、夕陽をおさめてシャッターを切るのが流行っているらしい。

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再び南方熊楠記念館へ。資料とグッズを買い込んで、もう一度展示を見る。再びバスに乗って白浜駅を目指す。途中の浜で、ダイビングをしている人たちを見かける。

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熊楠が住んでいた田辺まで電車で行こうと思っていたのだけれど、2時間くらい鈍行が来ない(その間、特急は2本くるみたいだけど)。

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駅の観光案内所で、バスで行く方法を聞く。観光案内所には、巨大な「クエ太郎」と「クエ美」のぬいぐるみが鎮座していた。

バスでちょうどよく紀伊田辺へ到着。でも、電車の特急料金とあんまり変わらなかったかもしれない。地方の路線バスは運賃が高いなぁ。

紀伊田辺駅は改装中。コインロッカーを探したが見つけられず、でかいリュックを背負ったまま街を散策することとなった。腹が減ったが、飯屋が見当たらない。それらしい看板はあるにはあるが、暖簾はみな仕舞われている。

腹を減らしたまま南方熊楠顕彰館に到着。こちらは入館料無料。研究者向けの資料館といった位置づけのよう。

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南方熊楠邸は有料(一般300円)。建物は2006年に復元されたもの。

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散らかし具合もやや再現されていたが、本当はもっとものすごーく散らかっていて、ものすごーく変な臭気が漂っていたのではと想像する。

長居したかったのだけど、腹が減ったのと荷物が重いのとで断念。駅前に戻って、唯一見つけたラーメン屋に入る(他にも喫茶店の軽食みたいなのはあった。この街の人は、洋食が好きなのだろうか……?)。

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らぁめん子弁慶で、和歌山ラーメンならぬ「田辺ラーメン」をいただく。

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うーん、ぼやっとした、とんこつ醤油?

駅前には弁慶さんがいる。

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そして、駅舎の脇にコインロッカーを見つけてしまった。悔しい。

特急「くろしお」に乗って和歌山市を目指す。海沿いを走る紀勢本線は絶景だ。水木しげるの『猫楠』を読みながら、ときおりチラチラと車窓を眺める。

懐かしの和歌山市駅に到着。盛大に建替工事中。

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「ビジネスイン南海」にチェックイン。ベッドでごろごろしながら、『猫楠』を読み終わる。続いて神坂次郎『縛られた巨人-南方熊楠の生涯-』を読み始める。

小さいリュックに切り替えて(なんて軽い!)、武内淳さんのThe Smile Chocolateに行く。その足でそのまま、同じく武内さんの水辺座へ。南方熊楠生家の酒蔵、「世界一統」のお酒をいただく。ちょうど日没の頃で、お堀だった水路が茜色に染まった。

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そしてここも、本のある酒場だ。

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本棚は、古い箪笥を使っているんだって。ちなみに、カウンターには欄間の彫刻がはめ込まれていた。

枝豆、豚の角煮、おでんを堪能し、ホテルに戻る。吉本ばなな『吹上奇譚 第一話 ミミとこだち』を読みつつ、22時15分に寝る。